研究課題/領域番号 |
21K05610
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
香西 雄介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (50783502)
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研究分担者 |
能年 義輝 岡山大学, 環境生命科学学域, 研究教授 (70332278)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 病害抵抗性 / オオムギ / 根腐れ病 / トランスクリプトーム解析 / ゲノムワイド関連解析 |
研究実績の概要 |
土壌に生息する糸状菌Rhizoctonia solaniは、世界規模で問題となっているコムギ・オオムギの根腐れ病の原因菌である。豪州での精力的な探索にも関わらず、本菌への抵抗性品種は確認されていない。我々は、岡山大学の大規模なオオムギ遺伝資源を用い、R. solani AG-4菌株に対する感染性評価を行った結果、Morex系統が強い抵抗性を示すことを発見した。 本研究では、その背景にある免疫応答の特徴づけ、および抵抗性遺伝子座の同定を目指す。 本年度は、Morex(抵抗性)とはるな二条(罹病性)のR. solani AG-4感染に対する応答の違いをトランスクリプトーム解析により調べた。汚染土壌に両系統の芽生えを移植、7日後の地上部と地下部をそれぞれサンプリングし、3’mRNA-seq解析に供した。得られたデータセットの主成分分析と発現変動遺伝子群(DEGs)の比較解析から、R. solaniに対する応答は両系統ともに地上部と地下部で顕著に異なっていた。そこで、地上部と地下部に区別して両系統の応答を比較した。DEGsのクラスタリング解析とGO解析の結果、はるな二条の地上部では防御応答関連の遺伝子、Morexでは栄養成長に関する遺伝子の発現が顕著に誘導されていた。一方、地下部における両系統の遺伝子発現パターンは類似していたが、Morexでは防御応答関連遺伝子の発現が抑制されていた。以上の結果から、罹病性のはるな二条では菌感染に応答した免疫応答の活性化が接種7日後まで継続するが、抵抗性のMorexは既に菌感染を抑止して通常の栄養成長にシフトしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
汚染土壌を用いることで、抵抗性系統と罹病性系統で病徴の差が明瞭に観察される接種法を確立した。この方法で接種したオオムギのトランスクリプトーム解析により、R. solani AG-4に対するオオムギの抵抗性系統と罹病性系統の免疫応答の違いを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の予定通りGWAS解析のためのオオムギSV274集団の根腐れ病抵抗性試験を実施するが、遺伝子同定後の機能解析を容易にするため、オオムギと同じイチゴツナギ亜科に属するモデル植物ミナトカモジグサの集団を利用したGWAS解析を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会や研究集会が新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン開催となったため、旅費として計上した経費に未使用額が生じた。
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