研究課題
土壌に生息する糸状菌Rhizoctonia solani AG-4は、世界規模で問題となっているコムギ・オオムギの根腐れ病の原因菌である。本研究では、岡山大学のオオムギ遺伝資源を用い、AG-4感染の阻止に有効な免疫応答の特徴づけや抵抗性遺伝子座の同定を目指す。本年度は、オオムギに加え、モデル草本植物であるミナトカモジグサも利用し、AG-4の根部および地上部への感染性を詳細に調べた。この結果、オオムギ系統Morexは根部および地上部どちらの部位でも抵抗性を示したが、Golden PromiseおよびHaruna-nijoは罹病性であった。ミナトカモジグサ系統Bd3-1およびGaz-4はR. solani AG-1の地上部感染に抵抗性を示すことが知られている(Kouzai et al. 2018)。これらの系統は、AG-4の根部および地上部への感染に対しても一定の抵抗性を示したことから、ミナトカモジグサ遺伝資源もAG-4抵抗性の解明に有効であると考えられた。AG-1の植物地上部への感染阻止に有効な免疫応答のキープレーヤーとして植物ホルモンであるサリチル酸(SA)が知られている(Kouzai et al. 2018)。本年度は、SAおよび植物の全身獲得抵抗性に関わるN-ヒドロキシピペコリン酸(NHP)が、AG-4の感染阻止に有効であるか調べた。SAまたはNHP(各1 mM)を噴霧処理したオオムギ系統MorexおよびHaruna-nijoの地上部に対するAG-4の感染性を調べたところ、NHP処理によってAG-4感染が抑制されたが、SAにAG-4感染を抑制する効果はなかった。一方、SAおよびNHPは、両系統へのAG-1感染を顕著に抑制した。従って、感染阻止に有効なオオムギの免疫応答は、AG-1とAG-4とで異なることが示唆された。
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