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2022 年度 実施状況報告書

チューリップモザイク病の分子機構と生物学的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K05611
研究機関岩手大学

研究代表者

八重樫 元  岩手大学, 農学部, 准教授 (90582594)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードチューリップ / チューリップモザイクウイルス / アントシアニン / ウイルスベクター
研究実績の概要

チューリップモザイク病は、チューリップ球根栽培における最重要病害であり、チューリップモザイクウイルス(tulip mosaic virus; TulMV)の感染により引き起こされる。本ウイルスのチューリップにおける主な病徴は、着色攪乱による花弁の色割れであり、その原因はアントシアニンの合成経路がTulMV感染により攪乱された結果であると推測されているが、どのようにアントシアニン合成関連遺伝子がの発現変動してが起こっているのか未だ不明である。
2022年度は、TulMVの感染により色割れを示す花弁、とくにTulMV感染により退色症状を示す花弁(品種”紫水晶”)を作出し、アントシアニン合成関連遺伝子の発現変動をRNA-seqとRT-qPCRで解析した。その結果、RNA-seq、RT-qPCRともにアントシアニン合成経路前半のカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子の発現量が顕著に減少していた。このことからTulMV感染による花弁の退色は、CHSの発現抑制が関与する可能性が考えられた。
遺伝子組換えが困難であるチューリップにおいて、リンゴ小球形潜在ウイルス(apple latent spherical virus; ALSV)ベクターを利用して上述の花弁退色の原因候補遺伝子であるCHSの遺伝子発現抑制が可能であるかを検証するため、7種のチューリップ栽培品種にALSVの接種試験を行ったが、いずれの品種でもALSVの感染は認められなかった。以上より、チューリップにおけるALSVベクターの利用は困難であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

チューリップモザイクウイルス感染紫水晶花弁のRNA-seq解析によるアントシアニン合成経路遺伝子の発現変動解析などは順調に進んだが、原因候補遺伝子の機能解析に利用予定であったALSVベクターをチューリップ栽培品種において広く利用することは困難であることが明らかとなったため。

今後の研究の推進方策

2022年度には、チューリップモザイクウイルス(TulMV)による花弁の着色攪乱に関わると推測される候補遺伝子を発見することができたが、ALSVベクターの利用が困難であることが判明したため、候補遺伝子(CHS)の解析を実施できなかった。そこで2023年度は、2021年度に全ゲノム配列を解読したTulMV紫水晶分離株(MZ)の感染性cDNAクローンを作出する。さらに作出される感染性cDNAクローンを基にTulMVの病原性に関わると推測されるサイレンシングサプレッサー遺伝子(HC-Pro)に変異を導入した弱毒型TulMV-MZ(TulMZ-FINK)を作出する。野生型とMZ-FINKをチューリップに接種し、花弁の着色攪乱とCHSを含むアントシアニン合成経路遺伝子の発現量を解析する。
また、本研究課題で計画していたアブラムシの選好性については、野生型TulMV-MZが感染し着色攪乱を引き起こしているチューリップ、弱毒型TulMZ-FINKが感染したチューリップおよび健全個体を用い、室内試験でアブラムシの選好性を調査する。

次年度使用額が生じた理由

ALSVベクターを利用した候補遺伝子の機能解析に利用する費用であったが、ALSVベクターはチューリップでは利用困難であることが判明したため、残額が生じた。2023年度には残額を利用して、当初予定していなかったチューリップモザイクウイルスの感染性cDNAクローンの作出と、チューリップでの遺伝子発現解析、およびアブラムシの選好性試験を実施する予定である。

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公開日: 2023-12-25  

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