研究実績の概要 |
日本産マダニ類の分類学的研究、ならびに分布や宿主情報の集積を継続中であり、2023年度には以下の成果が得られた。 従来、ユーラシア大陸に広く分布するコウモリ寄生マダニ類は、コウモリアシナガマダニIxodes vespertilionis Koch, 1844、I. collaris Hornok, 2016、I. ariadnae Hornok, 2014、コウモリマダニI. simplex Neumann, 1906の4種であると考えられていた。近年の研究により、東アジア産のコウモリ寄生マダニ類が上記4種と顕著な遺伝的差異を示すことが報告されていたが、詳細な形態学的比較がなされていなかった。そこで、日本各地で採集された3種のコウモリ寄生マダニ類について、形態と分子の両方から研究を進めた結果、これら3種はいずれも既知種とは異なる種であることが確認された。そこで、I. nipponrhinolophi(宿主:キクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ;分布:群馬県~熊本県;タイプ産地:山口県美祢市)、I. fuliginosus(宿主:ユビナガコウモリ、モモジロコウモリ;分布:群馬県~熊本県;タイプ産地:神奈川県相模原市)、I. fujitai(宿主:テングコウモリ;分布:滋賀県、岡山県;タイプ産地:滋賀県犬上郡)の3新種を記載した。 2020年から2022年の3年間に、栃木県足利赤十字病院(栃木県足利市)で確認されたマダニ刺症49例のうち40例がタカサゴキララマダニAmblyomma testudinariumに起因するものであったことを記録した。関東地方北部は従来タカサゴキララマダニが分布していなかった地域であるが、現在では本種が定着し、本種によるマダニ刺症が多く発生していることが明らかとなった。
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