研究課題/領域番号 |
21K05614
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹田 真木生 神戸大学, 農学研究科, 名誉教授 (20171647)
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研究分担者 |
片岡 孝介 早稲田大学, 総合研究機構, 次席研究員(研究院講師) (60822260)
鈴木 丈詞 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60708311)
澁谷 仁寿 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員 (10828346)
由良 敬 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50252226)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵休眠 / エンマコオロギ属 |
研究実績の概要 |
成育に不適な季節をやり過ごし、かつ効率的な生殖のために発育ステージを揃える生活史戦略として、休眠性を有する昆虫は多い。日本全域に生息するエンマコオロギは、年一化で内因性の卵休眠を示す。一方、その近縁種であるタイワンエンマコオロギは、主に九州や南西諸島に生息し、年二化かつ非休眠性である。そこで本研究では、両種の全ゲノム塩基配列情報に基づいた休眠卵と非休眠卵の比較トランスクリプトーム解析とマイクロCTを用いた内部形態解析により、エンマコオロギの卵休眠機構を解明することを目的としている。 当該年度は、両種の全ゲノム塩基配列の品質向上および胚子発育の実体顕微鏡を用いた経時観察を実施した。Pacific Bioscience社およびOxford Nanopore Technologies社のロングリードシークエンスデータ、Illumina社のショートリードシークエンスデータおよびDovetail Genomics社のOmni-Cデータを用いて、De novoアセンブラーやPolishingツール等の性能比較を実施し、高品質なドラフトゲノムを構築した。さらに、遺伝子発現エビデンスに基づいた網羅的な遺伝子モデルを構築するために、卵を含むさまざまな組織に由来するRNA-seq解析を用いて遺伝子アノテーションを行なった。このドラフトゲノム・遺伝子モデル情報に加えて、実体顕微鏡を用いた胚子発育の観察を実施した。何も処置を施していない卵を実体顕微鏡観察したが、胚子発育の動態は卵殻に阻害されて限定的にしか得ることができなかった。そこで先行研究に倣い、次亜塩素酸ナトリウムを用いた卵殻除去を試みた。条件検討の結果、無処置卵と同程度に胚子発育し、その動態をより具体的に観察できる条件を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、(i)ドラフトゲノムの構築、および(ii)実験室の条件での胚子発育の動態の記述的研究であった。(i)については、最適なツールの組み合わせを見出すことに成功した。また、卵を含むさまざまな組織からのRNA-seq解析を実施、品質に問題がないことを確認している。(ii)については、実験途中で卵殻除去の必要性が生じてやや予定から遅れたものの、胚子発育の観察に適した次亜塩素酸ナトリウムの浸漬条件を見出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降はまず、多様な組織の遺伝子発現データに基づく遺伝子モデルを完成させる。さらに、胚子発育の観察に適した条件で卵殻除去を実施し、卵休眠の前後に発生するイベント(卵の膨張など)が産卵後何日目に起こるか詳細に記述する。この観察結果に基づき、卵のRNA-seqを実施するタイミングを選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はin slico解析(エンマコオロギ属のドラフトゲノム構築)や卵の観察条件の検討が主な検討事項であり、当初の予定よりも使用した金額が少なかった。翌年度は、当該年度の成果を踏まえたトランスクリプトーム解析を重点的に実施する。
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