研究課題/領域番号 |
21K05622
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山本 大介 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90597189)
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研究分担者 |
加藤 大智 自治医科大学, 医学部, 教授 (00346579)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 吸血昆虫 / 性分化 / ハマダラカ / サシチョウバエ / 害虫防除 |
研究実績の概要 |
ハマダラカにおいて作製済みのアミノペプチダーゼN-like遺伝子(apnl)のノックアウト系統(apnl-KO)について解析を行ない、卵黄形成に関与するmTORシグナル経路の構成分子であるS6キナーゼの活性が吸血後のKO雌で低いことを明らかにした。また、マラリア原虫に対する免疫関連遺伝子のmRNA発現量が吸血時にKO雌で高いことを明らかにした。これらの結果から、apnlが生殖およびマラリア原虫感受性の両方に関わっていることが示唆された。 ハマダラカにおいて作製済みのDSXMの欠損系統(DSXM-KO)の解析を行い、雄成虫の外部生殖器の成熟および頭部付属肢(触角、小顎髭)が異常な表現型を確認した。これらの影響により、DSXM-KO雄は不妊であることが明らかになった。さらに、DSXM-KO雄のRNA-Seq解析およびそのデータを用いた野生型との発現量比較解析を行い、DSXM-KOで発現量に変動のあった遺伝子群の情報を得た。DSXM-KOの雄では雌の吸血に関連する唾液遺伝子の発現量が野生型雄より高いことが明らかになった。 2種のサシチョウバエ(Phlebotomus papatasi、Lutzomyia longipalpis)について、雌雄それぞれのcDNAを作製し、PCRにより雌雄でDSXのクローニングを行なった。2種とも雌雄でスプライシングパターンがことなるcDNA配列が得られ、性特異的なエキソンを有していることがわかった。このことからサシチョウバエでも他の昆虫と同様に、DSXは雌雄で一部アミノ酸配列の異なる性特異的な翻訳産物が産生されることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハマダラカ中腸遺伝子の機能解析についてはapnl遺伝子の解析が進んでいる。ハマダラカDSXMの機能解析については欠損系統の表現型解析およびRNA-Seqデータ解析を予定通り行なった。サシチョウバエのDSXの発現・構造解析についてもほぼ予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
DSXM-KOのRNA-Seqデータをさらに解析し、唾液遺伝子以外の分子についても調べる。候補としては嗅覚受容体や味覚受容体の遺伝子を検討している。 サシチョウバエについては性特異的なエキソン部位に対するRNAiによる遺伝子機能阻害実験を行う予定である。 ハマダラカでDSXFあるいはDSXMの強制発現実験を行い、性の撹乱が可能か調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する試薬量の節約による経費削減があったため。また当初、ハマダラカにおいて新規遺伝子改変系統作出を検討していたが、先にapnl-KO系統の解析に集中したためにそれに当てる予定の経費を次年度に持ち越すことにした。これらについては次年度の遺伝子解析実験、マラリア感染実験、遺伝子改変系統作出に充てる予定である。 さらに、新型コロナ感染症蔓延の影響により参加予定していた学会がオンラインになり、旅費が使用されなかったため。これについては次年度の旅費に充てる。
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