研究課題
越境性害虫サバクトビバッタは混み合いに反応し、行動、生理、形態学的特徴を変化させる相変異をしめす。生息地のサハラ砂漠は極端な熱や乾燥ストレスにさらされる過酷な環境である。その環境下で本種がいかにして生き延び、大発生に至っているのかその適応戦略はほとんどわかっていない。相変異に着目し、群生相化がいかに砂漠環境に適応するのに役立っているのかその生態学的意義を探ることが本課題の目的である。本年度は、群生相化した幼虫における体温調節行動と成虫における繁殖に関する行動と生理的メカニズムについて調査および解析を行った。その結果、幼虫は、致死的な高温時、行動や姿勢を変えることで約40℃の体温を保つことがわかった。集団移動する幼虫の胃は食物で満たされていた。高温のほうが消化速度を速めることから、砂漠の高温を巧みに利用することで、群生相幼虫は効率よく採餌および消化をし、発育を促進していることが考えられた。群生相化した成虫の繁殖行動に関するデータを解析したところ、雌雄が別居し、集団が雌雄いずれかの性に偏った集団を形成することがわかった。産卵直前のメス成虫がオスの集団に飛来し、交尾した後、夜間、集団産卵する傾向があることがわかった。群生相成虫は孤独相成虫に比べ、大型の卵を生産する。飼育実験のデータを解析したところ、集団飼育したメス成虫は、卵吸収する卵巣小管数の数を増やし、かつ、産卵間隔を延ばし卵母細胞の発達する期間を長くすることで、大きい卵を少なく産んでいることを示唆する結果が得られた。
3: やや遅れている
新型感染症の影響を受け、アフリカ出張を見合わせたため。
新型感染症の影響が小さくなった場合、アフリカ出張を実施する。外国の研究機関での室内飼育実験を行うことで、より詳細な実験を行うことで、サバクトビバッタの生態学的特徴に関する解明を進める。
新型感染症のため、外国出張を見合わせたため。アフリカに出張し、飼育試験および実験を行う
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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