研究課題
サバクトビバッタの生息地のサハラ砂漠は極端な熱や乾燥ストレスにさらされる過酷な環境である。本種の適応戦略を明らかにするため、胚期と成虫期について研究を進めた。サバクトビバッタは混み合いに反応し、行動、生理、形態学的特徴を変化させる相変異をしめし、高密度下で見られる群生相は低密度下で見られる孤独相よりも大きな卵を生産する。湿った地中に産下され、吸水することが以前の研究で明らかになっていたが、孤独相の小型卵と群生相の大型卵との間で吸水パターンに違いがあるかは不明であった。そこで、異なるサイズの卵がどのように吸水し、胚発育が進むのかをフランス農業開発研究国際協力センターの飼育設備を利用して調査した。その結果、卵サイズに関わらず吸水は産卵後4日目から7日目に急激に起こり、吸水率は両者の間に有意な差は見られなかった。このことより、卵の吸水パターンは卵サイズの影響を受けないことが示唆された。また、胚発育についても調査したところ、胚が反転した後のKatatorepsis期に卵黄吸収が起こり、両者の間で胚のサイズに違いが見られた。このことより、胚は卵内の卵黄の量と卵殻のサイズに応じてふ化時の大きさを決定していることが示唆された。群生相化したオス成虫は地表面でレックを形成し、飛来する産卵直前のメスと交尾することが我々の以前の研究で明らかとなった。オス成虫の体温調節戦略を調査したところ、背伸びをして地表と体との間を空け、クールダウンしていることが明らかとなった。低温時には太陽光に対し、身体の側面をさらす日向ぼっこ行動をとることがわかった。生理学的な実験により、オス成虫は54.7℃という高い高温耐性をもっていることがわかった。オス成虫はもともと生理学的に高い高温耐性を保持し、さらに行動的に体温調節しながら、高温の地表面で繁殖行動をしていることが明らかとなった。
3: やや遅れている
野外調査中、性成熟した成虫の集団を発見することができなかったため。
フランス農業開発研究国際協力センターにて室内飼育実験を行い、モーリタニアにてバッタ防除センターと共同で野外調査を実施し、サバクトビバッタの生態学的特徴に関する解明を進める。
海外出張の関係で調整する。
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Journal of Insect Physiology,
巻: 145 ページ: 104467
10.1016/j.jinsphys.2022.104467
Journal of Thermal Biology.
巻: 112 ページ: 103466
10.1016/j.jtherbio.2023.103466