研究課題/領域番号 |
21K05629
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90708364)
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研究分担者 |
川合 佑典 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (10709546)
北山 知代 特定非営利活動法人エバーラスティング・ネイチャー, 保全生態研究グループ, 研究員 (00934275)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウミガメ / 嗅覚器 / 鼻腔 / 組織学 / 形態学 |
研究実績の概要 |
本研究は、絶滅危惧種であるアオウミガメにおいて、嗅覚がその生態にどのような役割を果たしているのかを追究するために嗅覚器に関する基礎知見の集積を目的としている。令和3年度までは幼若個体を対象に解析を進めてきたが、令和4年度は発育による変化を検証するため成体を対象に解析を行った。 これまでにウミガメの鼻腔内には4つの匂い受容のための窩みが存在することを確認していたが、成体では空気中の匂いを受容する1つの窩みにおいて、"静脈ポンプ"構造を有することを発見した。これは血液をうっ血させて窩みを裏打ちする組織を膨張させ、窩みの内部に滞留した空気を押し出し、うっ血を解除することで新しい空気を取り入れるスポイトの役割を果たすと考えられる。このような"静脈ポンプ"は哺乳類のフェロモン受容器でよく知られており、本知見は成体のウミガメが受動的ではなく積極的に空気中の匂いを嗅いでいることを裏付けるものである。 加えて、ウミガメの鼻腔内に存在するすべての感覚上皮で、嗅覚受容体が発現していることを免疫組織化学的に示した。従来、ウミガメの水中の匂いを受容する領域は哺乳類やヘビ類のフェロモン受容器と相同の構造と考えられてきた。これらのフェロモン受容器は嗅覚受容体とは異なるフェロモン受容体を発現していることから、ウミガメが水中の匂いをどちらの受容体で認識しているのかは議論があった。本知見はこれらの議論に組織学的に結論を出したものである。 以上の成果を解剖学の伝統誌「Journal of Anatomy」で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、これまで未知であったアオウミガメ成体の鼻腔における組織学的特徴を詳細に解析し、幼若個体との明瞭な相違(発育に伴う変化)を捉えることができた。さらに発現する受容体の種類についても、大まかなグループの把握を達成した。 これらの成果は、国際誌での発表を済ませている。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、幼若個体と成体の微細構造学的な知見を集積し、発育変化をさらに詳細に検検証する。また組織化学的な手法を追加し、3つの感覚上皮におけるさらなる類似性・相違性について追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度まで、コロナ禍の影響により予定していた実験の一部が中止となっており、申請した物品費の一部を使用していない。また、共同研究先での実験・打ち合わせや学会発表の現地開催も中止となったため、申請した旅費を使用していない。 令和5年度以降において、移動を伴う実験や発表が可能となった際に、それらの経費を利用して研究の推進に役立てる。
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