研究課題/領域番号 |
21K05632
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡西 政典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70639278)
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研究分担者 |
藤田 敏彦 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 部長 (70222263)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海産無脊椎動物 / 分類 / 博物館標本 / 棘皮動物 / 海洋保全 / 分子系統解析 / 次世代シーケンサー / MIG-seq |
研究実績の概要 |
本研究では、インド―西太平洋海域に生息する小型の海産無脊椎動物である,ニシキクモヒトデ(Ophiothela danae)について,50年前より国立科学博物館(科博)に保管されている日本産の過去の標本と新規採集標本のDNA配列の比較を行うことを目的とした.2021年度には、科博に赴き、1962年から2014年までに、日本各地から収集されたニシキクモヒトデの標本149個体より、DNA解析用の腕の断片を収集することができた。これらは各地点で10年ごとに、10個体以上を含む網羅的なサンプリングとなるようにつとめ、これらについて、DNAの抽出、濃縮、断片度の測定、並びに次世代シーケンサーによるMI g-seq解析を行った。その結果、全ての標本から目的配列が得られた。これらの断片化を測定したところ、年代が古くなると断片化が進んでいる傾向はみられるものの、そうとはならない標本も確認された。これは、海産無脊椎動物においては、DNA解析用の標本の作成のためには、標本液に漬けている時間ではなく、採集から標本化までの時間が重要であることを示していると考えられた。この成果は海産無脊椎動物における標本作成の指針を示す重要なデータとなる。 現在はこれらの配列の解析中であり、少なくとも地域ごとで時間的な塩基配列の変化は少ないことが確認できている。この成果は、海産無脊椎動物では前例がほとんどない先駆的なものである。今後は解析を進め、全海域ごとの塩基配列の変化の違いを考察する。 また2021年度には、2020年代の標本の収集に務めた。各地の研究者の協力を得て、高知(大月町)、三重(鳥羽)、神奈川(三崎)のDNA解析用の標本を収集した。今後はこれらも含めて解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に実施予定であった、国立科学博物館標本の網羅的な収集、DNAの抽出、ならびにMIg-seqによる解析を行うことできた。COI配列の解析は行えなかったものの、全体の博物館標本の断片化傾向の測定と、各遺伝子配列の解析を行うことで、これらの配列が全てニシキクモヒトデのものであることが確認できている。またサンプリングについては、予定していた四地点のうち三地点でのサンプリングを行うことができた。2021年度にサンプリングが行えなかった和歌山については2022年度内に直接訪問し、サンプリングを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、MIG-seqによって得られたデータの解析を進め、その断片化傾向と地域・時間ごとの配列の変化を考察する予定である。この成果は年度内の学会にける発表、ならびに論文公表を目指す。また2021年度内に得られたサンプルについて、これまでと同様の解析を行うことで、現在までの遺伝子配列の変化を調べる。また、和歌山、鹿児島、沖縄でのサンプリングを行うことで、日本全国を網羅したサンプリングを完遂し、最終的な解析に向けて研究を進めていく。
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