「雑種に起源する多様な系統を含む倍数性複合体である」と称されるセイヨウタンポポは,日本でも形態的・遺伝的多様性が確認されている。そして,雑種の同定・区別はできないので,酵素多型やDNA多型に基づく雑種判定方法が複数提案されている。しかし,塩基配列の変化を伴わない染色体突然変異による多型を検出できず不完全であることから,細胞学的特徴に基づく多様性の把握が求められている。そこで本研究では,核型分析技術を活用した細胞学的特徴に基づく系統識別により,日本に分布するセイヨウタンポポの多様性を把握し,その起源を明らかにすることを目的とした。 タンポポ属は,倍数体の出現頻度が高く,かつ倍数体は無融合種子生殖を行うため,突然変異・交雑により誕生した系統の増加で多様性が増大する。その結果,相互に生殖的隔離のある多数の系統が出現し,外部形態の著しい多様性が生じたと考えられている。日本に産するセイヨウタンポポについて,核型分析技術を活用した系統識別により,地理的分布とその多様性,雑種の判定,倍数性・異数性の有無,類縁や起源を検証し,多様性の把握と起源の解明を目指し,特に,二次狭窄を持つサテライト染色体に注目した系統間比較を行った。 生育地における生個体の採集,現地調査による生育環境や集団サイズの評価や同所的に生育する同属他種の状況の把握,1集団あたり30個体以上のサンプリングにより集団内の変異の状況の把握を行い、実験圃場における栽培・維持・管理、染色体観察ならびに核型分析を行った。
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