研究課題/領域番号 |
21K05634
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
角田 恒雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (80446575)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 古代DNA / 生物多様性保全 / 海生哺乳類 |
研究実績の概要 |
本研究では沖縄県の各遺跡から出土する古代骨試料ならびに、県下の博物館・資料館に保管されている近現代の骨標本から遺伝情報を獲得して現生ジュゴンの全ゲノム配列をリファレンスデータとして活用し、本種の遺伝的変遷の解析を進めることを目的とする。本年度はすでに入手してあった沖縄県東岸の遺跡から出土した骨試料より抽出した古代DNAに加え、新たな骨試料の入手を予定していたが、現コロナ禍の影響によりサンプリングを行うことができなかった。よって入手済みの試料のみを対象として実験を進めた。抽出DNAからミトコンドリアゲノムの配列決定を行うため、次世代シーケンサー(NGS)を用いた分析を試みた。これまで行ったショットガン・シークエンスでは、対象とするミトコンドリアDNA由来の配列は得られたが、ごく微量で詳細な分析を進めることができなかったため、対象の古代DNAの濃縮を行い、再度NGS分析を行った。結果として、用いた試料のDNA残存量は濃縮作業後も極めて少なかったことにより詳細な分析まで進めることができなかった。リファレンスデータとして用いるためのジュゴン全ゲノム配列の決定に関しては、文科省科研費助成事業の先進ゲノム支援2021年度公募に新規ゲノムの配列の決定、解析結果のアセンブルに関する情報解析の申請を行なったが不採択であった。よって全ゲノム配列の決定には、 PacBio RS II Sequencingなど受託解析を用いた分析によって大まかな配列データ取得を目標するため、ライブラリ試料の作成に取り掛かり、本年度の先進ゲノム支援公募にも申請を行い、本研究の推進を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの実験から対象動物の古代DNA抽出には成功しており、ショットガン・シークエンスによるNGS分析の結果からは、直接分析を進めるだけのDNA量がまかなえていないことが判明していた。今回は対象DNAの濃縮作業を行い、再シークエンスを行ったが、やはり対象試料中の残存DNA量が少なく分析の進展が得られなかった。本年度はより古代DNAの残存が良好と思われる試料の採取を行う予定であったが、コロナ禍により現地に赴きサンプリングを実施することがかなわなかった。全ゲノム分析に関しては、2021年度の先進ゲノム支援公募の申請を行ったが不採択となった。一方で、PacBio RS II Sequencingなど受託解析を用いた分析によって配列データを取得するための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在入手している遺跡骨からの古代DNAでは、これまでのDNA濃縮作業を行っても更なる分析を進めるクオリティが足りていないことが判明したため、まず新たな古代DNAの残存が良好と思われる試料の収集が第一と考える。令和4年6月中には、再度のサンプリングを予定しており、現地協力者と綿密に相談を行い、できるだけ多くの試料の採取に勤める。令和4年度は複数回のサンプリングを予定しているが、長引いているコロナ禍の影響で試料サンプリングが進まない場合には、現地協力者から試料を送付いただくことも視野に入れている。また、DNA濃縮作業に使用する薬品の変更や、方法に改良を行い、より効率的にDNA濃縮を行える方法を施行する。全ゲノム分析では、2022年度の先進ゲノム支援(文科省科研費助成事業)に、新規ゲノムの配列の決定ならびに、解析結果のアセンブルに関する情報解析の申請を行なうとともに、民間の受託解析に用いるための試料準備も進め、配列データの取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進める上で、DNAの保存状態の良い試料の取得は最も重要であるが、新型コロナウイルスの影響によって令和3年度に予定していたサンプリングが一度も行えなかったことにより出張費が次年度以降分となった。また、新たなサンプルを分析するための実験が進められなかった影響により、試薬の購入費用などが結果的に抑えられた。全ゲノムデータの取得に関して、先進ゲノム支援公募に申請するが、同時に民間企業による受託解析も視野に入れており、それら委託実験費用や消耗品費用に当てることを予定している。
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