研究課題/領域番号 |
21K05643
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
石濱 史子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (80414358)
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研究分担者 |
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
戸丸 信弘 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50241774)
竹内 やよい 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (50710886)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 遺伝構造 / 種内変異 / 分布推定 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
本研究では、気候変動影響予測の改善を目的として、種内の遺伝変異を考慮する予測モデルを構築する。適応的一塩基変異(SNP)、目視可能な表現形質、中立変異の3つのレベルの種内変異の地理的分布情報を収集した上で、これらを考慮した分布推定モデルを構築し、推定結果や精度を比較することで、各レベルの変異に基づくモデルの特徴を明らかにし、気候変動影響予測の改善に有用なレベルを特定する。構築した改良モデルにより気候変動影響予測を行い、種内変異を考慮しない予測との比較することで、種内変異が気候変動への応答にどのように寄与するかを評価する。今年度は主に以下のデータ収集とモデル構築を行った。 種内変異の情報収集について、まず、中立変異について、文献等に基づき追加収集を行った。気候と関連した目視判別可能な表現形質の変異の収集については、GBIF等のデータベースからブナ、コンロンソウ、ミヤコグサ、ツリバナ、マイヅルソウ、タムシバの画像データ収集、開花展葉時期の読み取りを行った。また、葉の形状等の形態形質については、人工知能を活用した画像解析による形質情報収集の効率化手法の検討を行った。また、適応的SNPについては、ブナでの追加解析のためのサンプル採取を実施した。 種内変異を考慮した分布推定モデルの構築については、情報収集が進んでいる中立変異に関するモデルの構造の検討を行った。同じ種内の異なる遺伝タイプは、環境応答に関して一定の類似性を持ちつつも、タイプごとの特徴を持つことが期待される。遺伝タイプごとに別々にモデルを構築すると、類似性を直接的にモデルに組み込めないだけでなく、データをタイプごとに分割して用いることになるため、データ不足の問題が生じやすい。そこで、同種内の複数の遺伝タイプの分布推定を1つのモデルの中で行い、タイプ間での環境応答の共通性と差異とを同時に考慮可能な階層モデルの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝的変異の追加データ収集や形質情報の収集のためには、各地でのサンプリングや博物館標本での計測が必要であり、新型コロナウィルス感染症の感染拡大のため、現地調査に制約があり、収集にやや遅れが生じているものの、オンラインデータベースと画像解析技術の活用による収集の効率化を行うことができた。モデル構築については、中立変異に関するモデル構築を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
種内変異の情報収集については、引き続き、主に気候と関連した目視判別可能な表現形質の変異の収集と適応的SNPに関する収集を進める。 種内変異を考慮した分布推定モデルの構築については、中立変異に関するモデルの解析対象種を拡げて挙動・精度の検証を行う。また、遺伝解析サンプルの採取地点は一般に数十程度であり、これだけでは地点数がモデル構築には不十分であるため、博物館標本や植生調査等に基づくデータ補完方法の改良を行う。 中立変異について構築したモデルの構造を応用し、表現形質の変異に関するモデルの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により遺伝解析用サンプルの収集および博物館標本に基づく表現形質収集の実施に制約があり、旅費および解析にかかる研究協力謝金の執行に遅れが生じたため。
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