研究課題/領域番号 |
21K05645
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
山下 由美 福島大学, 共生システム理工学類, 客員准教授 (30792543)
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研究分担者 |
遊川 知久 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (50280524)
辻田 有紀 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80522523)
山下 俊之 奥羽大学, 薬学部, 教授 (90192400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラン科植物 / 共生菌 / 自生地播種 / 保全 / 種子発芽 |
研究実績の概要 |
日本産ラン科植物の約60%の種は絶滅危惧種に指定されており、保全技術の確立が急務である。しかしながらラン科の種子は微細なため、散布された種子や幼若個体の地中での観察が困難で、保全に不可欠な種子繁殖特性や幼若期の共生菌多様性が、ほとんどの種において明らかになっていない。これらの「ブラックボックス」を解明するためには、さまざまな立地において初期成長を継続観察する手法の確立と、幼若個体共生菌の分子同定技術の改良が必要である。最終年度までの3年間、ラン科の代表的な生育立地である1. 林床の種としてクマガイソウ(環境省絶滅危惧II類)、イイヌマムカゴ(同IB類)、シロテンマ(同IA類)、モイワラン(同IA類)、ヒメノヤガラ(同II類)2. 湿地の種としてサワラン、トキソウ(同準絶滅危惧種)、サギソウ(同準絶滅危惧種)、カキラン、ミズトンボ(同II類)、3. 樹上の種としてセッコク、フウラン(同II類)、カヤラン、クモランなどの種子を種子袋に詰めて自生地で播種試験を行った。その結果、林床の種であるクマガイソウの発芽試験に成功し、発芽した種子(プロトコーム)から発芽共生菌を単離・培養することに成功した。また、共生菌株を分子同定する事に成功し、発芽効率の極めて悪いこの種の播種時に分離菌株を添加することによって発芽率を向上させ、より効率的な保全法を確立できる可能性を示すことができた。イイヌマムカゴ、シロテンマ、モイワランの共生菌の同定にも成功した。湿地の種では全ての種で発芽の初期段階を確認したが、菌株の樹立・同定までには至らなかった。樹上の種であるセッコク、カヤランでも発芽に成功し、共生菌株を樹立すると共に同定にも成功した。以上によりラン科植物の3種の代表的立地での初期成長を観察する方法が確立され、共生菌の多様性解析に貢献することが出来た。
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