研究課題/領域番号 |
21K05654
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
小沢 晴司 宮城大学, 事業構想学群, 教授 (70600526)
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研究分担者 |
水谷 知生 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (40781555)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 風景 / 観光協会 / 保勝会 / 自然公園 / 宗教 / 山岳修験 |
研究実績の概要 |
本研究では,風景地の保全と利用に関わる「地元」の活動主体である,保勝会,宗教関係者,観光関連事業者,自治体の活動内容を明らかにし,近代以前からの自然資源の保全・活用の取り組みがどのように継承され,または変容してきたかを明らかにすることとしている。 2023年度には,昭和初期までに設立が多かった保勝会とその後に設立された観光協会について,組織体制と財政的基盤に関する資料を収集し,保勝会から観光協会への転換事例について検討した。また,昭和初期の帝釈峡,川上峡における保勝会の県立公園設置を目的とした活動事例を確認し,戦後直後の県立公園指定の動きや,蔵王国定公園の指定による自然資源の保全,スキー場や山岳横断道路建設による観光開発と脆弱な自然への影響,それらをめぐる地元研究者や市民団体,行政の対応等,及び信仰の山である栗駒・神室山系の国定公園指定による,南東北有数のブナ原生林の保全と国有林野事業に伴う伐採,さらには栗駒と同様地域の山岳信仰の対象となる船形連峰の県立自然公園指定によるブナ原生林の保全と,観光開発を目指す地元自治体による山岳横断道路建設への期待,そのせめぎ合いを含めた事例調査を進めた。 上述のケースのいずれも,山岳地域は基本的には地域における信仰の対象であり,その山域に広がる森林は信仰の対象として守られてきたのだが,その後,観光推進とモータリゼーション化による山岳地域への道路やスキー場開発により,地域の自然資源が失われてきた経緯を確認することができた。また,それら山岳地域は「奥山」である場合が通常であり,それらは林野庁の国有林野となっている場合が大半である。近代の,林野庁による拡大造林の影響も,豊かな自然資源の変容を受容せざるを得なかった風景地が辿った道筋といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査を進めるにあたり,さらに追加資料や現地調査,ヒアリングを行う必要が生じ,当初計画最終年次の2023年度中に研究をまとめられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
昭和初期の保勝会と観光協会が国立公園や県立公園の設置を目的として活動していた点について,さらに事例収集し,整理するとともに,各地の自然資源の保全と利用の取組が公園の設置を目的に進められ,戦後につながっていった動きを明らかにする。また,それらの動きと日本八景や他の投票イベントとの関係を整理する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は宮城,広島,佐賀の風景地に関する資料収集を行ったが,研究内容のとりまとめには,さらに,島根,千葉,北海道等の風景地の資料収集の必要があり,2024年度に計画的に資料収集を行い,とりまとめる予定である。
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