研究課題/領域番号 |
21K05663
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
粟野 隆 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (20393374)
|
研究分担者 |
張 平星 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (40846383)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 伝承造園技術 / 日本庭園 / 庭師 / 作庭 |
研究実績の概要 |
2021年度に挙げた成果で主要なものは、(イ)日本庭園の築造・育成・維持に関する伝承造園技術の一覧表の作成、(ロ)伝承造園技術を有した庭師の業績・足跡整理、の2点である。 (イ)については、日本造園組合連合会、日本造園建設業協会、日本庭園協会、日本植木協会、学識者・専門家と複数回にわたる検討会を開催し、日本庭園の築造・育成・維持に関する伝承造園技術の体系的整理をおこなった。伝承造園技術は「つくるわざ」(施工)と「そだてる・まもるわざ」(管理)に区分できる。「つくるわざ」には、①重量物の運搬、②石の吊り上げ・据え付け、加工、③庭園施設の材料の製造、④植木の繁殖、⑤土の仕事:地割の設定・地形造成、⑥石の仕事:石組・石積み・飛石・石張り等、⑦水の仕事:池泉・水工、⑧木の仕事:植木の移植・植栽、⑨庭園施設の工作、組み上げ、左官、⑩露地の仕事、があり、そだてる・まもるわざには、⑪植木の管理、⑫庭園の管理、の12種類に整理することができた。この12種類の体系には、183もの個々の技術が含まれる点を明らかにすることができた。これは伝統知・暗黙知の結晶たる「日本庭園のわざ」を庭師が連綿と伝承してきたことを示す知見といえる。 (ロ)については、日本庭園の築造にかかる伝承造園技術を有した日本近代の庭師の全体像をまとめ雑誌に発表するとともに、個別の庭師については、4代目岩本勝五郎、永井楽山、木部米吉の3名を掘り下げてその作風や本質に迫った。 その他の成果としては、庭石の運搬と据え付けに関する伝承造園技術の検証として、三又と猫車の実施方法などの検証をしつつ、金閣寺出土品を参考した修羅を製作し、庭石の運搬実験を実施した結果、重量物の運搬道具としての有用性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体構想は、日本庭園の築造、育成、維持に関する伝承造園技術を解明することである。この課題を達成するため、2021年度は伝承造園技術の全体像(12の技術体系と183の個々の技術)を明らかにし、どの部分の技術を深く研究しなければならないか、といった全体像を把握することができた。当初の計画通りの進捗状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、上記した12種類の技術体系について、個々の技術・方法を、図、写真等を交えながら精緻に整理する。日本近代の庭師の使用言語についても文献調査から明らかにしつつあり、庭師の使用言語の分析として、近代以前の庭師の使用言語がどれくらい現代に引き継がれているかを知るため、日本庭園にかかわる各種団体にご協力を得つつアンケート等を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は日本造園組合連合会、日本庭園協会等が主催する伝承造園技術の講習に同行し、さまざまな伝承造園技術の実演状況を動画、写真で記録するために旅費を計上していたが、コロナ禍もあって講習そのものが中止になることが多かったため、旅費の支出がほとんどなく、次年度使用額が生じた。2022年度は、これらを旅費にあてる、あるいは、各団体と伝承造園技術に関するカルテの制作を準備しているため、謝金等に使用することを想定している。
|