研究課題/領域番号 |
21K05668
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
木佐貫 博光 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00251421)
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研究分担者 |
熊谷 朝臣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50304770)
宮沢 良行 九州大学, キャンパス計画室, 学術推進専門員 (80467943)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大台ヶ原 / 蒸散 / 樹液流速 / ササ / ゴヨウツツジ / トウヒ |
研究実績の概要 |
大台ヶ原東部のかつて常緑針葉樹林であった場所に,ニホンジカによる樹木や林床植生の被食を回避するために防鹿柵が設置されて20年以上が経過した.一方,柵内では,時間経過とともに地下茎で稈本数を増やすクローン繁殖戦略を持つササが著しく繁茂した.ササの稈高は,柵外ではシカの採食により稈高50cm程度である一方,柵内の広い範囲で概ね稈高1mを超える.このように繁茂したササの蒸散による旺盛な水消費が,常緑針葉樹トウヒの天然更新木や植栽木の水分吸収に支障をきたしている恐れがある.本研究では,ササ群落が樹木の水分生理に及ぼす影響を評価することを目的に,ゴヨウツツジ,トウヒ,ならびにササを対象に樹液流速の観測を行った.ササの樹液流観測のための機器の設置は,前年に出筍した稈については2022年5月上旬から,当年生の稈については7月から開始し,10月まで継続して行った.ゴヨウツツジおよびトウヒの観測機器の設置は,2022年5月から10月まで行った.樹液流速測定センサーについては,ヒートパルス法のHeat Ratio Methodを用い,ササについては細い稈に特化した超小型センサーを自作した.さらに,樹液流速に影響する可能性がある自然環境要因として,気温,日射量,降水量,大気飽差を観測した.さらに,ササの葉量の季節変化を把握するために,葉面積指数(LAI)を継続的に計測した.2022年11月までのササ群落LAIは,5月上旬で最小,8月上旬から中旬で最大を示した.これは当年稈の葉が展開し終わり,葉量が最も多くなる時期が8月上旬であることを示唆する.樹液流速については,降水による浸水の影響を受けた期間のデータやバグを消去する作業などを進めており,今後,得られたデータを用いて,気温,降水量,日射,大気飽差などの気象要因が,ツツジ,トウヒ,ササの樹液流速に及ぼす影響についての検討を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年は曇天日および雨天日が断続的に継続したため,濡れによる植物体に取り付けたセンサーの不調,データロガーの浸水などによる故障などの理由により,期待していたデータの多くが欠落してしまった.また,センサーの濡れによる影響と思われるデータのバグが多くみられ,それらを除去することに時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定が順調に進んでいないものの,太陽光発電の体制は確立しており,今後は予定通り樹木とササを対象にした樹液流測定を継続して試みる.ただ,計画していたササの除去実験を,令和5年度に行うことも難しくなっており,期間を延長して令和6年度に行わざるを得ない状況になった.データロガーの浸水を避けるための改善や,センサーの防水を徹底的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
直径およそ5mmの細い稈を持つミヤコザサを対象として樹液流速を測定するため,microHRMセンサーおよびデータロガーをともに自作して用いた.しかし,防水が十分でなかったせいか,データにバグが多く含まれることとなった.また,データロガー機器の接続が不調な期間があった.これらの機器の設置は雨天で行えないが,調査予定日が雨天日になることがしばしばあったことから,調査に行くことが出来ずに予算執行が滞った.また,予定していたササ除去実験を始められなかったことも,調査回数の減少に伴う次年度使用額の発生につながった.
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