研究課題/領域番号 |
21K05669
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松岡 真如 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50399325)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光学リモートセンシング / 影の補正 / 森林の三次元モデル / 航空機レーザスキャナ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、航空機レーザスキャナで取得した森林の三次元構造を用いて、衛星で観測した反射率から影を除去する手法を開発する事である。研究実施計画に記載した5項目のうち、2022年度は(3)極軌道衛星を用いた影の除去と(4)静止軌道衛星を用いた影の除去を実施した。 極軌道衛星を用いた影の除去では、森林の三次元構造から衛星観測時の影をシミュレーションし、衛星が観測した反射率と比較した。その結果、両者は基本的に直線関係だが、回帰の残差に地形に起因する偏りがみられた。そこで、この影響を組み込んだモデルを作成・適用した結果、冬季の近赤外反射率で決定係数が0.9を超えるなど、高い再現性が示された。このモデルを用いて影を補正した反射率を求めたところ、いずれの季節においても山の斜面方位や樹冠による影が除去された、空間的に滑らかな反射率が得られた。また、季節変化についても太陽高度の影響が補正され安定した反射率となった。現在、これらの結果を論文に整理している。 静止軌道衛星を用いた影の除去では、Himawari-8/AHIの日本域データを対象として、反射率の日内変動と影との関係性を解析した。2.5分間隔で観測されるAHIデータに合わせて影をシミュレーションし、反射率の観測値と比較した。その結果、朝夕の変動はほぼ一致するものの、太陽高度の高い昼の時間帯は、影の変化が小さいにも関わらず、反射率は比較的大きく変化していた。この特徴は特に、衛星と太陽の方向が近くなる春分と秋分の昼に顕著であった。この解析により、太陽を背にすることで視野内に影が見えなくなる状況(BRDFモデルのいわゆるホットスポット)を表現することの重要性が示された。この結果は国際学会で発表された。また、研究の過程で実施した静止軌道衛星のオルソ補正(正射投影補正)について、方法を論文にまとめて投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
影のシミュレーションについて、昨年度まで実施していた点群を球として用いる方法から、小区画内で1番目と2番目に高い点を用いた方法に変更した。その理由は、ドローンによる高密度な点群には前者が適していたが、この研究で用いている航空機レーザスキャナのような比較的疎な点群では影の生成をうまく再現できなかったためである。また、影の補正に際し、反射率をそのまま補正するか、放射輝度に変更してから補正するかを判断する必要がある。使用している反射率は入射光に直達成分のみを用いて計算されたものである。散乱成分が反映されていないため、放射輝度に戻した上で直達成分と散乱成分を用いて反射率を再計算する方が、季節性を反映させた方法となる可能性がある。現在、この点について補助的な解析を行っている。一方で、当初の予定になかったが、他の研究成果と合わせて、Himawari-8/AHIのオルソ補正の方法をまとめて論文として投稿した。極軌道衛星と静止軌道衛星のデータを相補的に用い、高解像度かつ高頻度な解析を行う研究は今後ますます重要となる。解析の精度向上には正確な位置合わせが必要となり、オルソ補正が不可欠である。静止軌道衛星のオルソ補正の手法はほぼ確立されているが、それを参照できる論文がほとんど存在しなかった。今回の論文が静止軌道衛星のオルソ補正データの普及に役立てばと考えている。以上のことから、作業に遅れはみられるものの、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度であり、研究実施計画に記載した5項目のうちの4項目について、以下のように研究を進める予定である。 (3)極軌道衛星を用いた影の補正では、「現在までの進捗状況」で説明した反射率か放射輝度かについての補助的な解析を進めると同時に、成果を論文として投稿する。 (4)静止軌道衛星を用いた影の補正では、国際会議で報告した内容に基づいて解析を進める。特に、衛星と太陽の方向が重なり、影が見えなくなる時に生じる反射率の上昇については、現行のシミュレーション方法では再現が難しいため、観測角度に応じた反射率分布を(確率密度関数のような)関数で表現することを考えている。この解析を終了した後に成果をまとめたい。 (5) 影を除去した反射率を得ることが困難なため、本研究の補正結果は絶対的な精度評価が難しい。そのため本研究では、常緑針葉樹林の反射率は季節的に安定していることを拠り所として、時系列データによる評価を行ってきた。今後は、極軌道衛星と静止軌道衛星の補正結果を比較することが可能となるため、両者の反射率の差や季節変化を比較することで補正結果の妥当性を評価する予定である。 本研究の手法では、三次元モデルの点群密度が影の生成シミュレーションの結果に大きく影響する。そこで(1)点群密度の違いによる影生成状況の違いの解析では、ドローンとStructure from Motionによって生成した高密度点群を間引きながら、「現在までの進捗状況」で説明した二つの手法をそれぞれ用いて影を生成しながら、その結果と衛星が観測した反射率とを比較する。これにより、点群の密度が反射率の補正結果に及ぼす影響を定量し、次の研究への知見としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、国際学会がオンラインとなったことで旅費を使用しなかった。また、点群密度の違いによる影生成状況の違いの解析において、ドローンの新規購入の必要性を検討していたが、調査地や航空機レーザスキャナのデータの利用可能性とのかねあいから購入を決定できなかったためである。次年度は点群密度の影響を解析するためのドローンの購入および関係する消耗品の購入などに使用する計画である。
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