光学リモートセンシングの問題として、同じような森林であっても、時期や場所により観測される反射率が異なるという点がある。主な原因は影であり、太陽高度の季節変化、山地での森林の立地、樹冠構造の違いなどに依存する。本研究の目的は、航空機レーザスキャナ(ALS)で得られた三次元情報を用いて、衛星で観測された反射率から影を除去する手法を開発することであった。本年度は、研究実施計画に記載した5項目のうち、(5)影を除去した反射率の精度評価を行った。 評価の一つ目として、開発したモデルを適用した際の決定係数の季節変化を調べた。その結果、特に近赤外域の反射率において、太陽高度が低くなるほど決定係数が上昇し、冬にモデルの適合度が高かった。二つ目の評価では、欧州宇宙機関がSentilel-2衛星で採用している補正手法と、既存のC correction手法の二つを対象に、補正後の画像を比較した。その結果、常緑林における夏と冬の反射率の違いや、山の日照側と日陰側との反射率の違いが小さいという点で、本手法の結果が優れていた。比較的新しい計測機器であるALSを用いることの有効性が示されたといえる。現在、この成果は研究論文として査読を受けている。 実施項目(4)静止軌道衛星を用いた影の補正では、Himawari衛星に搭載されたセンサAHIを用いて、地形による位置のずれを除去するためのオルソ補正の手法を論文として公開した。手法に新規性はないが、新型の静止軌道衛星が米国・欧州・中国などで運用されていることを鑑み、アルゴリズムを整理する必要性から論文にまとめた。現在は、ALSを用いてAHIの画素に含まれる影の量をシミュレーションしているが、観測回数の多さや点群データのボリュームから処理が遅れている。計算でき次第、反射率の日内変動との比較を行い、点群を用いた二方向性反射モデルの有用性を評価する計画である。
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