研究課題/領域番号 |
21K05675
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
福田 陽子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (00370825)
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研究分担者 |
永野 聡一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50753836)
松田 修 九州大学, 理学研究院, 助教 (60346765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トドマツ / 種子 / 休眠解除 / 遺伝子発現 / 内生ホルモン |
研究実績の概要 |
本年度は新たに15系統(母樹)から採種を行い、2020年に採種した11系統と合わせて28日間、56日間、112日間の低温湿層処理ののち発芽試験を行い、低温湿層処理期間の長さおよび系統による真正発芽率(充実種子のうち発芽した種子の割合)および平均発芽日数(播種から発芽までの日数)の差異を調べた。さらに、母樹の選抜地(自生地)の積雪環境と必要な低温湿層処理期間の関係についても検討した。すでに試験が終了した20系統による結果では、2021年度の結果と同様低温湿層処理が長いほど真正発芽率が高く、平均発芽日数が短くなることが確認できた。また、系統ごとの真正発芽率の推定値と平均発芽日数の推定値の間には負の相関が認められ(p=0.005)、効率的に種苗生産を行うためには種子の品質が重要であることが示された。低温湿層処理期間が最も長い112日間と最も短い28日間における平均発芽日数の差を低温湿層処理の効果の大きさとし、系統ごとにその差を求め、選抜地の寒候期最大積雪深(国土数値情報気候値メッシュデータによる)との相関を調べたところ、強くはないが正の相関が認められ(p=0.065)、積雪の多い地域ほど休眠解除に必要な日数が長い傾向が見出された。 遺伝子発現解析およびホルモン定量解析に向けて、乾燥種子および低温湿層処理後の種子からのRNA抽出および内生ホルモン(アブシジン酸、ジベレリン)の定量についての予備実験を行った。乾燥種子からはRNA-seqへの供試が可能な品質のRNAが抽出できたが、低温湿層処理後の種子では抽出したRNAの品質が安定しない傾向が認められたため、手法の改良を進めている。内生ホルモンの定量についても、試料の破砕・抽出方法の改良を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、新たに種子を採取し、低温湿層処理の期間が休眠解除に及ぼす影響およびその系統間差異についての研究を進めることができた。また、積雪量が多い地域に生息する系統は、休眠解除に必要な期間が長い可能性を示すデータが得られており、トドマツの休眠特性における系統および地理変異の解明に向けた研究は順調に進展している。しかし、遺伝子発現解析のためのRNA抽出およびホルモン定量解析については、特に低温湿層処理中、または後の種子からのRNA抽出およびホルモン定量における種子の凍結・粉砕方法および適切な試料量の決定のために予備試験を繰り返しており、改良はされているものの本試験の手法の確立には至っていないため、研究にやや遅れがあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、遺伝子発現解析およびホルモン定量解析に向けた実験手法の検討および本試験に適した材料の選定を進めており、実験方法および供試材料を決定した後、選択した系統の種子について近赤外分光法による選別を行い、充実種子のみを用いて低温湿層処理期間における発現遺伝子プロファイルおよび内生ホルモンの変化を明らかにする計画である。現在積雪環境の異なる産地の種子を材料として休眠解除プロセスにおける産地間変異の解明を進めており、新たに種子が収集できれば継続して試験を行う予定である。さらに内生ホルモンが発芽に及ぼす効果が解明できれば、外生ホルモンの利用による休眠解除手法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はホルモン定量解析および遺伝子発現解析のためのRNA抽出を行う予定であり、これらにかかる費用を計上していたが、予備実験のみで本試験に着手できなかったため、翌年度に繰り越し使用することにした。
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