研究課題/領域番号 |
21K05681
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研究機関 | 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター |
研究代表者 |
鶴田 健二 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 研究員 (70638593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 森林の水源涵養機能 / 長期森林理水試験地 / 蒸発散 / 洪水流量 / 渇水流量 / 森林管理 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
我が国では,水源涵養機能を持続的に発揮させるために,森林の整備と保全が国及び地方自治体の下で推進されているが,水源地として重要な森林をどのように管理していけば水源涵養機能を高度に発揮し,将来の気候変動下においても安定した水資源を提供しうるのか,水文学的な視点での科学的根拠に基づいた森林管理技術が構築されていない.本研究では,森林管理が洪水流量の低減および渇水流量の維持に及ぼす持続的効果を評価するとともに,それらの効果の限界点となる気象条件をその時の森林管理状態・成長段階とともに抽出することを目的として研究を進めている. 本年度は,解析に必要な基盤データの整備を行った.まず,試験地における森林構造(幹直径や立木密度など)の長期的変遷を調べた.試験地植生のセンサスデータ(樹高や材積など)を取りまとめるとともに,当該試験地に関する文献値を網羅的に収集することで,森林の成長過程を把握した. 次に,試験地における長期気象データの整備を行った.現地観測された気象データを整理し,必要に応じて補完作業を行った.また,現地観測データが存在しない過去の気象データについては,周辺の気象ステーションデータを利用して推定した.周辺の気象ステーション間における試験地の気象特性を詳細に検討し,それを反映する推定手法を用いて,試験地の過去の気象データを復元した.以上2種類の気象データを統合し,データベースとして整備するとともに,試験地の長期的な気象トレンドを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時の研究計画に基づき,研究を遂行している.当初の予定通り,本年度は試験地における基盤データの整備を完了した.また,本年度から流域水循環モデルの改良作業にも着手する計画としており,そのための文献調査と計算環境の整備を進めた.以上のことから,当初計画していた課題をおおむね達成できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,流域水循環モデルの改良作業を行う予定である.まず,蒸散・遮断蒸発サブモデルともに,気象と森林構造を入力データとするモデル構造とすることで,森林管理による森林構造の変化が蒸散・遮断蒸発に及ぼす影響を評価可能なモデルへと改良する.試験地における蒸散・遮断蒸発量の実測データを基に,蒸散・遮断蒸発モデルを最適化する. 次に,蒸散・遮断蒸発サブモデルを流域水循環モデルに組み込み,森林構造の変遷データを入力データとする.改良した流域水循環モデルを用いて,長期の流出水量及び蒸発散量データの再現性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本助成金を利用し,現地観測に必要な物品の購入を行ったが,効率的な観測方法を考案できたことから,本年度の物品費を抑えることができた.生じた次年度使用金と翌年度の助成金を合わせることで,森林構造に関する補足データを取得するとともに,翌年度から本格的に開始する計算作業のために使用したいと考えている.
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