気候変動下における森林の水源涵養機能の持続性と限界点を評価するため,本年度は長期気象データの再整備及び長期蒸発散データの解析を行った. 近年の気象データ実測値の補正作業を行ったため,それに伴い,昨年度推定した過去の気象データを再整備した.再整備を行った気象要素は,日射量,気温,湿度,大気飽差である.その結果,試験地において気温は上昇する傾向にあるものの,湿度には明瞭なトレンドは認められなかったため,大気飽差は上昇する傾向(大気が乾く方向)にあった. 気象データの再整備に伴い,研究協力者とともに蒸発散データの再補正作業を行うとともに解析を行った.解析に用いたのは2001年~2020年までの20年分のデータである.20年間で蒸発散量は約100mmの変動があり,変動係数は約4%であった.一方で降水量の20年間の変動係数は約14%であり,蒸発散量は比較的安定していた. 今後は,20年間の蒸発散変動を生態系モデルを用いて再現可能にするとともに,過去の気象データ,試験地の森林構造データ(樹高,材積など)などを入力データとして,森林成立時からの蒸発散量の変化を再現する計画である. さらに,流出量の計算を行うために,流出モデルの改良を行う.以上で推定した蒸発散量が入力データとなるモデル構造とすることで,気象,森林構造の長期的な変化に伴う流出量の変動を明らかにする. 試験地の流出量データは1972年から利用可能である.特に近年の流出量データについては,研究協力者とともにデータの補正作業を行う予定である.
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