研究課題/領域番号 |
21K05683
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
則定 真利子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00463886)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンモニウムイオン / 硝酸イオン / 吸収速度 / 転流 / Melaleuca cajuputi / Eucalyptus camaldulensis / Acacia mangium / 高温ストレス |
研究実績の概要 |
Melaleuca cajuputi、Eucalyptus camaldulensis、Acacia mangiumを対象に、根の窒素吸収能に対する高温ストレスの影響を評価するための、窒素安定同位体を用いた窒素吸収評価水耕実験系を確立した。植物育成装置内において、明期2時間目に20分間窒素安定同位体を含む培養液に根を浸し、その後、通常の培養液に戻してから翌暗期終了時に器官ごとに分けて植物体を回収し、各器官の窒素安定同位体の濃度を測定することにより、窒素の吸収速度と地上部への転流を評価できることを確認した。硝酸イオンとアンモニウムイオンが共存する条件でM. cajuputiの窒素吸収特性を調べたところ、アンモニウムイオンを主に吸収し、硝酸イオンの吸収速度はアンモニウムイオンの吸収速度の1/10以下であることが明らかとなった。M. cajuputiは、オーストラリアから東南アジアの低湿地域に生育するフトモモ科樹木であるが、低湿地域では硝化の抑制や脱窒により、無機態窒素としてはアンモニウム態が卓越しており、そのような立地での生育に適合しているといえる。吸収した窒素の地上部への転流に関しては、窒素形態の関わらず、明期初期に吸収した窒素の8割近くが翌暗期終了時までに地上部に転流することがわかった。Eucalyptus camaldulensisとAcacia mangiumについても、吸収した窒素の8割程度が翌暗期終了時までに地上部に転流することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温ストレスが根の窒素吸収能に与える影響を評価するための実験系を確立した。今後はこの実験系を用いて高温ストレスが根の窒素吸収能に与える影響を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
窒素吸収評価水耕実験系を用いて、高温ストレスが根の窒素吸収能に与える影響を明らかにする。培養液の温度を制御して24時間の高温ストレスを根に負荷し、根の窒素吸収能を測定する。高温ストレスを解除して24時間後にも窒素吸収能を測定し、回復力を評価する。高温ストレスに対する馴化能を評価するため、明期のみ培養液の温度を上げる処理を7日間繰り返した後に窒素吸収能を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも少ない試行回数で実験系を確立することができたため、試薬、消耗品の経費が少なくて済み、次年度使用額が生じた。実験回数の増加や測定精度の改善のための支出に充てる予定である。新型コロナウイルス感染問題が収束し、タイおよびインドネシアの植栽試験地における調査の実施が可能となった場合には、調査費用の補充にも充てる。
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