本課題では、アカエゾマツを研究材料として、根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性に家系間差が生じる要因を明らかにすることを目的とし、根元曲がりや幹曲がりの抵抗性に差があることが既知の家系材料、あるいはその親クローンの個体を対象に、初期成長量や材質形質の差異を調査してきた。2023年度は、解析家系の親クローンを対象としたミクロフィブリル傾角と木材密度の解析を完了し、両形質には明瞭なクローン間差があること、また、木材密度は樹齢とともに変化するものの、幼老相関が認められたことから、成木時の調査から得られた木材密度の差は、若齢時の木材密度の差として間接的に推定可能であることを明らかにした。また、大幅な幹曲がりの原因となり得る冠雪害が2022年12月に多数発生した検定林があったため、その被害調査を進め、雪害の発生頻度にも家系間差があったことを明らかにした。雪害の頻度が高かった家系は、30年次に観察された樹高や樹高と胸高直径の比である形状比が高い傾向にあったことも明らかとなり、これら成長特性の違いが、被害の程度に家系間差を生じた要因と示唆された。 以上の結果と過去2年間に実施した検定林での家系サンプルの調査結果をとりまとめ、以下の結論に至った。根元曲がりや幹曲がりへの抵抗性が高いことが既知の系統は、材質形質に優れる(ヤング率が高く、材密度が高い)ことに加えて成長速度が中庸か、あるいは、成長に優れるが材質形質が中庸というどちらかの特徴を有しており、本課題申請時に立てた2つの仮説:材質に優れることで雪圧等による曲がりが生じにくい、あるいは、成長に優れることで早期に曲がりやすい状態の時期を脱するとともに、曲がりを生じても回復しやすい、を支持すると言えた。以上より、初期成長及び材質形質から根元曲がりや幹曲がりの抵抗性の高低を予測することができると考えられた。
|