研究課題/領域番号 |
21K05697
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
宮下 彩奈 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10708499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 風害 / 樹木力学 / ひずみゲージ / 間伐 / 風荷重 |
研究実績の概要 |
森林内では、間伐等による林内ギャップの存在や林況(立木密度・形状比・樹齢)の違いにより、個々の樹木のおかれる状況は多様である。これらの違いは樹木個体にかかる風荷重に差異をもたらすと考えられ、特に間伐などで林内にギャップができた場合に残存木の風害リスクが上昇することが知られている。しかし、実際に樹木個体に加わる風荷重の実測データはほとんど存在せず、そのため林況や施業と風害リスクの関係についての定量的な指針は存在しない。そこで本研究では、個体のおかれた状況と風荷重パターンとの関係を解析し、風害リスクが高まる場所や条件を明らかにすることを目的とする。そのために、課題担当者らが開発したひずみゲージを用いて樹木個体に作用する風荷重(総荷重・荷重方向・荷重重心位置)を精度よく計測できる手法を用い、人工林内で複数の樹木個体に対し風荷重の計測を実施する。 本年度は、森林総合研究所内の苗畑に整備したスギの稚樹林(約400㎡、平均樹高約6m)を利用して徐々に間伐面積を増やしながら残存木の風荷重を計測する試験を行った。2023年10月から稚樹林内の18個体の林内木に対して風荷重の計測を開始した。また、林外と林内の2か所で超音波風速計による3次元風速も記録した。2024年1月以降、プロット内の中央付近の樹木個体を段階的に伐採していき、風上側に徐々に空隙を拡大していった。計測は年度末まで継続する。一方、初年度に実施した人工林2か所における間伐試験のデータを一部まとめ、本数30%ランダム間伐の林分では樹木個体にかかる風荷重が間伐後に平均約1.5倍になったのに対し、本数20%劣勢木間伐の林分では間伐前後で変化がなかったことを明らかにした。これらのデータは日本森林学会大会にてポスター発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り若齢林における間伐試験を実施するとともに、初年度のデータをまとめ学会発表したことから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年間の計画である。初年度に成熟林にて間伐前後の風荷重計測を行い、本年度はこれらのデータ解析と若齢林での間伐試験による風荷重計測を実施した。次年度は間伐試験のデータ解析および学会発表を行う。データ解析では間伐による空隙の大きさおよび空隙からの距離を主なパラメーターとして各測定木における風荷重の変化を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会旅費が想定より安く済んだため(宿泊しなかったため)。次年度の消耗品の購入に使用する。
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