研究課題/領域番号 |
21K05703
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
前田 啓 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00714883)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 熱線法 / ホットディスク法 / 木材 / 熱物性 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究で使用する非定常熱物性測定法について、木材を測定する際に影響を与える要因の検討を実施した。 熱線法については、熱伝導率が既知の板目材(キリ、スギ、エゾマツ、コナラ、シラカシ)を用い、測定手法の確認を実施した。センサーの向きが繊維方向と接線方向となるように測定したところ、センサーが接線方向の場合に得られる熱伝導率は繊維方向の場合より大きく、センサーと垂直な2方向の熱伝導率の相乗平均とよく一致した。この結果は直交異方性材料の熱伝導方程式による予想と一致しており、熱線法による木材の熱伝導率測定の妥当性が確認された。 また、同じ板目材に1mm厚の薄板(バルサないしヒノキの板目板)を1~4枚載せて真空包装した試験体を用い、積層方向の測定範囲についても検討を行った。薄板が1~3枚の時は母材の密度が大きい方が測定値も大きくなった一方、薄板が4枚の場合の測定値については、薄板の樹種のみの影響を受けていた。このことから、今回の条件(加熱時間60秒)では、放射方向に4mm以内の範囲が測定値に影響していることが確認された。 ホットディスク法による熱物性測定については、昇温速度が測定値に与える影響を検討するため、キリ、スギ、ヒノキ、ケヤキ、ブナ材に対し、加熱開始8秒から80秒での昇温が1~4Kとなる条件で測定を行った。その結果、熱伝導率は昇温速度による変化が見られなかった一方、昇温速度が1~2Kにおいて昇温速度の増加に伴った熱拡散率の増加が観察された。このことから、ホットディスク法による測定において昇温速度が測定値に影響を与える因子であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、熱線法による熱伝導率測定について、各方向の熱伝導率との関係や、測定値に影響を与える厚み方向の範囲を確認することができた。またホットディスク法についても、加熱量の違い、すなわち昇温速度の違いが測定値に影響を及ぼすことを確認できた。 以上の結果から、内部に密度や含水率のばらつきを持つ試験体の熱伝導率測定の条件設定が可能となったため、初年度はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
密度や含水率の異なる薄板について、含水率や密度のばらつきが生じるよう積層し、外部との水分移動が生じないよう加工を施した試験体を作成する。この試験体について熱物性の測定を実施し、密度や含水率のばらつきが測定値に与える影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に研究代表者の所属機関が変更になり、手続き等で研究を進められなかった期間があっため、当初予定していた実験の一部を次年度に延期したことで次年度使用額が生じた。今年度は、当初予定した実験と延期した分の実験について、必要な消耗品購入や人件費、成果の発表に必要な経費を使用する予定である。
|