食材性昆虫のフラスの利用を目的として、カブトムシ科、クワガタムシ科、カミキリムシ科等の幼虫が産生したフラスの形態および化学的特徴の検証を行った。多くの昆虫においてヘミセルロースの分解が認められたが、クワガタムシ科およびカミキリムシ科のフラスでは、セルロースの分解活性も認められた。ただし、クワガタムシ科幼虫は白色腐朽菌による分解を受けた材を摂食していることから、木部穿孔性で、成木および倒木を直接栄養源とするカミキリムシ科の幼虫に焦点を当て調査を行った。 今年度はカミキリムシ科幼虫のフラス生産速度の調査および、フラスを用いた材料の試作を行った。クワカミキリ(Apriona japonica)幼虫を対象として、フラス産生速度および算出されたフラスの形態および化学的特徴を調査した。孵化後50日未満の幼虫のフラス産生速度は0.083±0.033 g/週、孵化後50日以上の幼虫のフラス産生速度は0.118±0.021 g/週であった。産生されるフラスは多数の微細な消化物がランダムに凝集して一定の大きさの紡錘形を形成していることが明らかとなった。穿孔枝の木粉とフラスの近赤外スペクトルを比較したところ、クワカミキリ幼虫のフラスでは主にヘミセルロースとセルロースの一部が分解されており、リグニンはほとんど分解されていないことが考えられた。このことは昨年度検証したマルクビケマダラカミキリのフラスと共通するものであった。さらに今年度は、マルクビケマダラカミキリのフラスを金型に入れて熱圧成型し、フラスのみで成型体を作成した。熱板温度190℃で作成した試験体は自己接着し、割裂引張強度は5.6N/mm^2以上を示した。このことから、食材性昆虫のフラスのみで木質材料が製造可能であることが示された。
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