研究実績の概要 |
セルロース系コレステリック液晶におけるラセン周期(ピッチ)と旋回方向(センス)に及ぼす分子構造・環境因子の解明、ならびに高性能・高機能な液晶光学材料の創製を目指した研究を行い、以下の成果を得た。 A. 位置選択置換エチルセルロース(EC)の調製とその液晶形成挙動の解析評価 4-メトキシトリチル基による6位選択保護を経由して、2・3位が完全にエチル化された位置選択置換ECと、そのアセチル化試料(2,3-di-O-ethyl-6-O-acetyl/ethyl cellulose)を調製した。次いで、テキシルジメチルシリル基とアリル基を用いた3位選択保護を経由して、2・6位選択置換ECとそのアセチル化試料(2,6-di-O-ethyl-3-O-acetyl/ethyl cellulose)を調製した。試薬量等の反応条件を調整し、任意の置換度での選択保護を可能とした。さらに、市販EC(ランダム置換体)とそのアセチル化試料との比較実験により、置換基分布の違いで有機溶媒への溶解性が変化し、濃厚溶液中での液晶形成挙動も変化することを見出した。 関連して、市販ECとそのアセチル化試料のブレンド溶液における液晶形成挙動を調査し、アセチル基組成の変化に伴う異種ポリマー鎖間のキラル相互作用を議論しえた。 B. ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水系液晶における置換基効果と包接錯体形成能を活かした機能材料化 HPCの側鎖に、水溶性の環状オリゴ糖であるβ-シクロデキストリンと包接可能なアダマントイル基を導入し、水系でのアダマントイル化HPCの液晶形成挙動を調査した。アダマントイル置換度を極低く抑えた試料は水溶性を維持し、置換度に応じて様々な呈色を示すことを確認した。また、β-シクロデキストリンとの包接によって水に難溶な高置換度体も高濃度で水に溶解し、光学異方性を示すことを明らかとした。
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