研究課題/領域番号 |
21K05714
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
山内 繁 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (30279509)
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研究分担者 |
渋谷 栄 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 准教授 (50404851)
栗本 康司 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (60279510)
山ギシ 崇之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 技術職員 (60723830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 逆モーゼ効果 / 鉄担持木炭 / 常磁性金属イオン / 吸着 / 高純度炭素 |
研究実績の概要 |
2022年度では、3d金属イオンの水溶液中での吸着実験を中心に研究を進めた。吸着媒に用いたのは、主として600℃または800℃で炭化した鉄担持スギ木炭である。無垢材からつくった木炭に比べ、800℃炭化の鉄担持木炭は複数の3d金属イオン、特に3価のクロムイオンに対して強い吸着能を示すことを確認した。逆に、600℃炭化の鉄担持木炭では、吸着能に変化がないか負の効果を示すという、学術的に興味深い結果が得られ、日本木材学会大会で発表した。 さらに、炭化温度による木材成分の変性と鉄化学種の相関を詳細に検討した論文が、Wood Sci. and Tech.誌に掲載された(“Characterization of iron-loaded charcoal using infrared-photoacoustic spectroscopy: Factors governing graphitization,” https://doi.org/10.1007/s00226-022-01436-4)。また、鉄担持木炭のラマンスペクトルにおけるG'バンドのシフトと結晶構造の関係を議論した論文がJ. Wood Sci.誌に掲載された(“An investigation into carbon structures in iron-loaded charcoal based on the Raman shift and line-shape of the G´-band,”https://doi.org/10.1186/s10086-023-02081-6)。 一方、高純度炭素製造に関しては、800℃での炭化後に徐冷(2℃/分)した鉄担持木炭について、炭素含有量が92%と以上という結果を得たが、目標とする98%には届いていないため、現在炭化条件及び脱鉄方法等について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要の項で記述したように、2年間において企画立案した研究計画は、ほぼ予定した通りに進展していると自己評価している。 まず、いくつかの分光分析法を用いて、炭化条件による木炭中鉄化学種の変化を十分に把握できたこと、そして強磁性鉄化学種を微粒子として含有する木炭を吸着媒とした3d金属イオンの吸着実験で、実用への発展が期待できる結果が得られたことがその理由である。具体的には、800℃炭化の鉄担持木炭は、特に3価のクロムイオンに対し、高い吸着能を呈すことを確認した。つまり、クロムイオンの選択的吸着剤実用化への可能性を示したことになる。さらに、高純度炭素製造についても、鉄含浸木粉を炭化後に徐冷することで、無垢材を原料とした木炭よりも有意に炭素含有量が高いと推定される木炭が得られた。以上が、研究が順調に進行していると判断した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、800℃で炭化し急冷した木炭を吸着媒として、3d-ブロック金属イオンの水溶液中での吸着実験を中心として研究を進行させる。特に、金属イオン濃度を変化させ、その影響について検討する。また、鉄担持木炭への着磁方法を工夫して吸着能の向上を図る。また、セシウムイオンを吸着質とした吸着実験も行い、われわれのグループがすでに報告している通常の木炭を用いた結果と比較し、1族元素イオンへの応用の可能性についても検討する。 さらに、他の遷移金属イオンを含浸させた木粉を炭化し、含浸金属イオンの種類が木炭中炭素の分子構造に与える影響を考察する。 現時点では、スギに限定している木炭の原料樹種を、比較のため広葉樹、具体的にはコナラ材を原料とした鉄担持木炭についても、吸着実験を行いたいと考えている。
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