研究課題/領域番号 |
21K05716
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
戸川 英二 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60343810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セルロース / 疎水化 / 液体ビー玉 / 気相コーティング |
研究実績の概要 |
液体ビー玉の外殻を形成するセルロース微粒子(パウダー)に関し、サイズや起源の異なるセルロース粉末を各種用いて[ろ紙粉末(パウダー)4種:(40-100 mesh)・(100-200)・(200-300)・(300-)、再生セルロース微粒子(φ 5 μm)、スギ微粉砕木粉(20 μm<)]、シランカップリング剤であるメチルトリメトキシシランによる気相コーティング法を適用したセルロースパウダーの表面疎水化、続く液体ビー玉形成可否について調べた。セルロース微粒子のサイズや種類に関係なく、使用した全種類の疎水化セルロースパウダーに液滴を滴下させて液体ビー玉を形成させることができた。また、疎水化ろ紙粉末(300-)および水を外殻・内部液にそれぞれ使用した液体ビー玉を用いてその性質を検討した。液体ビー玉は滴下する水量に応じてそのサイズが可変すること、複数個を合一させることができること、さらにろ紙上で押し潰せば外殻セルロースおよび内部液を分離して内部液の回収、外殻セルロースパウダーの再利用可能なことを確認した。 さらに、液体ビー玉の内部液となる液体に関し、性質の異なる水溶液を各種用いて液体ビー玉の形成条件を検討した。その結果、使用する液体による液体ビー玉形成の可否は液体の溶解度パラメーターや極性指標各種との相関が見られ、ある程度高い溶解度パラメーター、あるいは極性を有していないと液体ビー玉は形成しないことが明らかとなった。具体的には、グリセリンとエチレングリコールは任意の濃度で、メタノールの場合は40%、エタノールの場合は30%までの濃度ならば液体ビー玉を形成させることが可能であった。 また、液体ビー玉はその表面疎水性を利用して、水面浮遊できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から当該(令和4)年度に計画していた研究内容、すなわち液体ビー玉の形成を制御する因子の解析、とくに①セルロースパウダーのサイズや種類、および②液滴の性質を変化させた際の特性分析、に関しそれぞれ成果を出すことができた。具体的には、①のセルロースパウダーの種類関しては、非セルロース成分を含有している木粉を使用しての液体ビー玉形成に成功している。また、②の滴下する水溶液(内部液)の性質に関して、溶解度パラメーター(極性)がセルロース液体ビー玉の形成に深く関係していることを明らかにしている。 以上の成果が得られていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる令和5年度は、セルロース液体ビー玉のさらなる特性評価を行なうため、顕微鏡を用いた形態観察および形状安定性(崩壊特性)を検討する。形状観察に関しては、液体ビー玉のよりミクロな構造的特性を明らかにする。また、液体ビー玉の安定性は、内部液の蒸発スピードによる崩壊、および機械的な方法による破壊特性から評価する。これまでの結果を総合的に評価することによって、セルロース液体ビー玉の特性を解明し、その特性を活かした利用方法を探索する。 疎水化したセルロースパウダーの代替素材としてセルロース誘導体のパウダーを用いて液体ビー玉の形成を試みたところ、想定していなかった興味深い挙動が認められたため、その使用および特性解析はあらためて検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナパンデミックの影響による製品の欠損および物流の停滞によって、調達を計画していた物品の(年度内)納入が困難となった。とくに、海外製品(テフロン加工品)による納品日時未定があった。さらに、参加を計画していた学会大会やシンポジウムのいくつかがオンライン開催となったため、計上していた旅費の支出がなかった。以上の理由によって次年度使用額が発生した。 本年度は最終年度に当たるため、早期の助成金執行を行なう。学会大会やシンポジウムなどは対面開催が多くなっている状況下、積極的にこれらに参加し、本課題の成果を公表していく計画である。
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