研究課題/領域番号 |
21K05721
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研究機関 | 長野県林業総合センター |
研究代表者 |
増野 和彦 長野県林業総合センター, 特産部, 研究員 (50450820)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 味の見える化 / 味認識装置 / ナメコ |
研究実績の概要 |
味を切り口としてナメコの品種及び栽培技術を改良することが将来的な目標である。そこに向けて本研究では「味の見える化」のため、日本国内から収集したナメコ野生株子実体の味認識装置による味分析データを集積し、得られたデータを基に特徴的な野生株を優良育種素材として選抜することを目的とする。 2021年度は、まず日本国内で収集し保存しているナメコ野生株から採集地が北海道から九州まで全国に及ぶように57菌株を選定した。選定した菌株について菌床栽培試験を行い、栽培特性を調査するとともに得られた子実体を味認識装置による味分析に供した。 供試したナメコ野生株57系統中49系統で子実体が発生した。一番収穫所要日数、早晩生、総収量について野生株の栽培特性を把握した。一番収穫所要日数について、現行の実用品種と同等の20日間以内の菌株は子実体発生菌株の4.1%に相当する2菌株であった。早晩生区分を行ったところ、現行の実用品種と同等の早生は子実体発生菌株の4.1%に相当する2菌株であった。総収量について、現行の実用品種と同等の150(g/ビン)以上の菌株は子実体発生菌株の2.0%に相当する1菌株であった。これらの結果から、一番収穫所要日数の最も短かった2系統と総収量の最も多かった1系統、合わせて3系統を栽培特性から優良素材として選定した。 栽培試験によって得られた49菌株中30菌株の味分析が終了した。官能評価で多くの人が美味しいとするナメコを味分析すると、旨味値が大きく苦味雑味値が小さかった。そこで、30菌株の味分析結果から旨味値と苦味雑味値の散布図を作成し、味分析結果による「味に見える化」と優良素材の選抜を図った。その結果から、旨味値が大きく苦味雑味値が小さい5系統を美味しいナメコの優良素材として選定した。 「栽培特性」及び「美味しさ」の両面から優良素材に選定された菌株は1系統(石川県採取)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、美味しいナメコ生産への道を開くための技術的な基盤の構築を目指し、日本産ナメコの味の見える化、味に特徴のある優良育種素材の選定、に取り組む。 そのため初年度として、日本国内で収集し保存しているナメコ野生株から、採取地が北海道から九州まで全国に及びように菌株を選定し、菌床栽培試験を行った。栽培特性を調査するとともに得られた子実体を味認識装置による味分析に供した。 栽培試験によって得られた49菌株中30菌株の味分析が終了した。官能評価で多くの人が美味しいとするナメコを味分析すると、旨味値が大きく苦味雑味値が小さかった。そこで、30菌株の味分析結果から旨味値と苦味雑味値の散布図を作成し、味分析結果による「味に見える化」と優良素材の選抜を図った。その結果から、旨味値が大きく苦味雑味値が小さい5系統を美味しいナメコの優良素材として選定した。合わせて、一番収穫所要日数、早晩生、総収量について野生株の栽培特性を把握した。栽培特性からも3系統の優良素材を選定した。味分析、栽培特性の両者から優良素材に選定された系統が1菌株あった。 これらの結果は、当初の研究計画に沿ったものであり、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に採取した味分析試料19系統分の分析を進める。さらに、これまでと異なる地域から採取したナメコ野生株について栽培試験を行い、栽培特性を調査するとともに得られた子実体を味分析に供する。得られた結果と前年度までの結果と統合して、主成分分析等で散布図を作成して「味の見える化」を図り、特徴のある優良育種素材を選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による人流抑制のため人件費を抑制せざるを得なかったこと、分析単価が予想より下がり外注費が少なかったことが主な理由である。次年度には、状況が好転すると思われるため人件費は次年度分と合わせて使用する。また、外注費については、当初の計画より多数を発注することで、有効に使用する。
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