研究課題/領域番号 |
21K05723
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高津 哲也 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50241378)
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研究分担者 |
中屋 光裕 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (80604313)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 母親効果 / マダラ / 成長仮説 / 被食仮説 / 耳石 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,産業重要種であるマダラGadus macrocephalusの野外採集仔魚から「母親効果」を検出し,母親効果を考慮した漁獲への変更が,資源量回復にどの程度貢献するのか解明することである。また,環境変動が資源量変動におよぼす影響も同時解析することで,母親効果を利用した資源保護策の有効性も明らかにする. まず,これまでのマダラの親魚量と着底期までの仔稚魚の生残率の関係を明らかにするために,主要産卵場の一つである青森県陸奥湾の1989年から2019年までの両者の豊度の間で累積的生残率を推定し,その年変動を明らかにした.その結果,累積的生残率は仔魚期の前半にあたる2月下旬から3月中旬の水温が高いほど高く,仔魚期の後半と稚魚期にあたる3月下旬から5月下旬の水温が7.6℃で最大値を示すことを明らかにした。水温はそれぞれ全変動の23%と22%を説明した。 次に,孵化仔魚の耳石輪紋に形成される孵化チェック(通常より太い日周輪)の大きさが,卵径に比例するか明らかにするために,2022年1月に津軽海峡で採集した成熟魚を用いて人工授精・飼育を行い,孵化直前の卵と孵化直後の仔魚を得た。また成熟魚の体長や年齢,栄養状態が卵径におよぼす影響を明らかにするために,耳石による年齢査定と魚体測定を行った。 野外採集仔魚は2021年4月と2022年2月に,主要産卵場である青森県陸奥湾でプランクトンネットによる採集を行った。同時に物理環境データと,仔魚の餌生物であるかいあし類ノープリウスの採集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去32年間に入手していた仔稚魚の豊度と,親魚量や仔稚魚期の水温を比較することで,累積的生残率におよぼす水温の影響を解明した。またその説明の程度を示す変動が22%から23%と推定されたことから,母親効果による変動がこれらの値を上回ることができれば,有効な資源管理手法であると判定可能となるため,有力な判断基準を得たといえる。 本研究の重要な指標である卵径と孵化チェック径の関係は,産卵期である1月まで飼育実験を待たねばならなかったため,解析が終了していない。本年度の前半までに解析を進め,翌1月に再度飼育実験を行い,再現性を確認する。 仔稚魚の野外採集は,4月と2月は実施できたが,新型感染症の拡大に伴い,5月下旬の着底稚魚の採集はできなかった。本年度は確実に実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
マダラの成熟個体や仔稚魚の標本数を確保するために,新型感染症が拡大した場合にも入手可能な経路を拡大する。具体的には各漁業協同組合や水産研究機関に,混獲される標本の入手を要請する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により,予定していた乗船調査が中止になり,それにかかわる旅費を使用しなかったこと,また実験室内での作業補助が雇用できなかったため。
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