研究課題/領域番号 |
21K05726
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森阪 匡通 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00422923)
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研究分担者 |
濱 裕光 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 名誉教授 (20047377)
橋本 幸枝 追手門学院大学, 経営学部, 講師 (10846512)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イルカ / 胴まわり / やせ具合 / モニタリング / 保全 |
研究実績の概要 |
野生動物の胴まわりは,生物学的に重要な基礎情報であるとともに,個体の健康状態を示すバロメータでもある.野生個体群の各個体のやせ具合を継続してモニタリングすることにより,個体群の質的劣化を早期に検出できれば,迅速な保全対策を講ずることができる.これまで私たちは,水中で自由遊泳中のイルカの映像から胴まわりの縦横比を出す方法を編み出した.しかし,水中での自由遊泳時におけるイルカの胴まわり形状(切断面の形状)に関して十分な情報が存在せず,提案手法の精度評価には困難を伴った. 本研究では,ハンドウイルカの胴まわりの形状,およびやせ具合をより顕著に高精度に検出できる可能性の高い首まわりの形状から,非接触で取得する画像処理手法を確立する.最終的には,野生のイルカの胴まわりなど基礎情報の蓄積とやせ具合を記録し,保全に寄与するモニタリングシステムの構築を目的としている.
2年目である令和4年度は,水中窓を通してイルカ前方からの撮影を試み,イルカの胴まわりの形が楕円に近いことを確認した.また,首まわりに関しても円に近い楕円であることが推定された.これをもとに,これまでに取り組んできた回転を利用したイルカの胴まわりの推定法をベースとして,首まわりについて仮想的に数学的モデルを作成し,提案手法の有効性を確認するため予備的にシミュレーションを行った.一方,小型ビデオカメラ2台によるシステムについて,令和3年度の反省を生かし,カメラがぶれないようにきちんと固定できるシステムとし,実際に野生のミナミハンドウイルカの撮影を行い,新年度に備えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胴まわりの非接触での測定手法の確立について,2年目である令和4年度は伊豆諸島御蔵島周辺海域に生息する野生のミナミハンドウイルカを,2台のビデオカメラを用いて撮影を行った.軽量で取り回しがよくフィールドワークに適しているが,時間同期が手間であった.楕円率を推定し,痩せ具合を評価するために,一定方向に進みながら体軸中心に回転しているイルカの動画を取得することを試み,提案手法の有効性は確認済みである. 一方,胴まわりや首まわりの形状に関する基礎情報の取得に関しても,ひきつづき様々な手法を試みた.形状保持カラーワイヤ―を用いた測定に関しては,安全性の面で問題があったため,水中窓を通して遊泳中のイルカを正面から撮影し,胴まわりの形状を推定することとした.水族館の2頭のイルカの胴まわり周辺の形状を楕円近似し,3枚ずつの写真から楕円率を測定したところ,変動係数はそれぞれ0.009および0.058となり,おおよそ個体内で一致していることから,イルカの胴まわりは楕円近似でよいと考えられた.野生のミナミハンドウイルカの映像でも同様に楕円形状をしていることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和5年度は,作成した小型ビデオカメラ2台によるシステムによって,イルカの撮影を御蔵島にて継続するとともに,これまで取得してきた映像と合わせて胴まわりの推定を行い,年齢と胴まわりの関係式を作成し,年齢ごとのいわゆる基準範囲を作成していく.そしてこれを論文化していきたい.この基準範囲をもとに,やせ個体を判断することができる. 一方,首まわりに関しては,これまでの回転を利用した推定法をベースとした推定法を確立させていきたい.最初は数学的モデルを用いて,検証を重ねながら提案手法の実用化に向けて取り組む. やせ具合を示す簡便な手法として,鯨類の飼育員など専門家が用いる,痩せ具合を目視で判断するBody Condition Score(BCS)を用いて,首まわりのへこみ具合を,接線からのずれ具合を数値化することで示す方法を試したい.まずは数学的モデルおよび模型を用い,簡便手法がやせ具合をどのくらい反映できるのかを検討していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた水族館における研究が大幅に減ったこと,および簡便な手法を行うこととしたため,予定より費用が掛からなかった.このため,次年度に使用することで,より迅速に研究を行えると判断した.これらのお金を使うことによって,水族館での研究を少し増やすことができる.また本年度より様々な大学の仕事が増え,研究フィールドに長期滞在できないため,何度か行くこととなり,旅費が増えるので,それも賄うことができる.
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