研究課題
魚病ウイルス(特許申請前につきウイルス名は秘匿としています)に対して、大腸菌発現によるウイルス様粒子(Virus-like particles: VLPs)ワクチンを開発する。現行の魚病ワクチンの多くは不活化ワクチンであり、ウイルスを株化細胞等で増殖させ、ホルマリン等で不活化するため高価になりがちである。しかし、我々が開発中のVLPsワクチンは、大腸菌発現系で大量に製造可能なため、製造コストを大幅に抑えることができ、これまでコスト的な問題で適応が難しかった多くの魚病ウイルス感染症や海外での使用拡大も可能となる。令和4年度は、VLPs抗原ならびに発現レベルが向上した分子改変VLPs抗原のワクチン効果を検証した。すなわち、これら2種類のVLPs抗原を試験魚へ投与し、その抗原特異的抗体価を測定したところ、優位に高い抗体価が誘導されていることが分かった。また、病原性ウイルス株を用いた攻撃試験を実施したところ、優位に高いワクチン効果を示した。また、前記VLPs抗原の分子構造的特性に着目し、本来VLPs形成が困難な他の魚病ウイルス抗原を前記VLPs抗原表層上に提示した粒子状構造(「疑似ウイルス様粒子(Pseudovirus-like particles: PVLPs)」)の開発において令和3年度に抗原コンストラクトを構築したので、令和4年度はこのコンストラクトを用いて大腸菌で発現させ、その生化学的解析を実施した。その結果、PVLPは大腸菌で可溶性発現し、発現した抗原を精製後に電子顕微鏡で撮影したところ、VLPsを形成していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度に計画していた魚を用いた免疫試験およびウイルス攻撃試験を実施し、その結果、VLPs抗原は高いワクチン効果を確認した。また、PVLPsの大腸菌での発現解析ならびにその生化学的解析を実施し、VLPを形成していることを確認した。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
令和5年度は、VLPs抗原および分子改変VLPs抗原の発現レベルの向上を目指し、大腸菌培養培地による発現量の比較検討する(担当:玉城)。また、VLPs抗原の精製をより簡便的かつ高純度に精製できる方法の検討を継続する(担当:玉城)。次に、これらVLPs抗原のワクチン機能をさらに検証するため、令和4年度に使用した試験魚種とは別の魚種を使用した免疫試験およびウイルス攻撃試験を実施する(担当:玉城)。PVLPsについては、令和4年度とは異なる抗原をVLPs表層上へ搭載したコンストラクトを複数構築し(担当:新川・玉城)、大腸菌で発現させ、その生化学的解析を実施する(担当:玉城)。
当初の計画よりスムーズに実験を進めることができたため、予定していた試薬類の購入額が低くなったことにより、次年度使用額が生じた。R5年度は当初計画より多くのPVLPsコンストラクトを構築し、それらの大腸菌発現解析および発現抗原の生化学的解析に使用する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Protein Expression and Purification
巻: 195-196 ページ: 106096
10.1016/j.pep.2022.106096