研究課題/領域番号 |
21K05730
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
澤山 英太郎 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70846071)
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研究分担者 |
高木 基裕 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (70335892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マダイ / 養殖 / 逸出個体 / 一塩基多型 / 個体識別 |
研究実績の概要 |
本年度は、新規に開発した一塩基多型(SNP)パネル(249遺伝子座)の実験/解析条件の最適化を行うとともに、実際の天然個体を用いて逸出個体が検出できるかどうかを検討した。まず、前課題により開発したSNPパネルに用いるプライマーを全て混合し、プライマー濃度を86nM、43nM、21.5nMの濃度でPCRを実施した。PCRにはTakara Multiplex PCR Assay Kit Ver.2を用い、15uLの系で20サイクルで行った。その結果、プライマー濃度86nMと43nMで良好な増幅が見られたが、21.5nMの濃度では増幅が見られなかった。なお、DNAの濃度によっては20サイクルで増幅が見られなかったため、一部サンプルでは30サイクルに変更した。 インデックス配列の付与はPrimStar GXL polymeraseを用い、13サイクルのPCRにより行なった。マルチプレックスPCR産物にはプライマーダイマーが多く見られたため磁性ビーズを用いて精製してからインデックス配列を付加したが、マルチプレックスPCR産物を希釈するだけでも良好な結果が得られた。 上記の方法で得られたライブラリを精製し、6pMの濃度に調整したものを次世代シークエンスに供したところ、良好な塩基配列を得ることができた。次世代シークエンスにはMiSeq Nano kitを用いたが、個体数が70個体程度になると解析に用いるリード数が不足する傾向にあり、今後はMini kitなどを用いる必要がある。 データ解析を行なったところ、220個程度の遺伝子座でSNPを得ることができた。また、高知県浦ノ内湾で漁獲された天然個体(n=53)を解析した結果、7個体が養殖個体と識別された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、SNPパネルの解析手法をおおむね確立することができた。また、天然1集団の解析により、本SNPパネルを用いることで養殖個体を識別できることが明かとなった。実験手順についてはコスト面や煩雑さを考慮してマイナーチェンジを加える必要があるものの、本年度でおおむね確立できたことから、「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した手法のマイナーチェンジを行い、より簡便にSNPタイピングができるように工夫したいと考えている。具体的には、①マルチプレックスPCRに用いるプライマーの濃度を低くする代わりにPCRのサイクル数を30サイクル程度にまで上げること、②マルチプレックスPCR産物の精製条件の検討(ExoSAPの利用など)などを行う予定である。これら2点が解析を進めるにあたりボトルネックとなっていることから、次年度前半でこれらのマイナーチェンジを進め、多検体処理をより簡便に行えるよう準備したいと考えている。 また、本年度は天然集団を1集団解析するに留まったため、今後はより多くの地域のサンプルを用いて逸出個体の割合を求めていく予定である。既に、熊本、長崎、和歌山、三重、島根県の天然サンプルを必要尾数得ており、順次解析を進めていく予定である。 また、同時に、養殖集団で選抜育種の影響を受けたゲノム領域を探索する予定である。既に、わが国で養殖されている主要な養殖集団5つを入手しており、これらサンプルを用い、天然集団と比べてFst値が有意に高い値を示す領域を探索する。また、可能であれば連鎖地図情報などを利用してリファレンスゲノム配列の向上に勤めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため、サンプリングを1回しか行うことができなかったため、余剰金が生じた。サンプリングは1回であったが、日数を増やすことで対応し、必要数のサンプルを得ることができた。今回の余剰については消耗品を購入し、サンプルの整理に用いる予定である。
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