研究課題/領域番号 |
21K05731
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
間野 伸宏 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10339286)
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研究分担者 |
高井 則之 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00350033)
周防 玲 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (20846050)
柴崎 康宏 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (30750674)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 魚病 / 疫学調査 / 河川動態 |
研究実績の概要 |
河川におけるアユの細菌性冷水病(以後冷水病と称す)の発生は、アユ釣り解禁後に主に認められるが、放流アユ由来説や河川定着説などがあるものの、その発生源は特定されていない。そこで本研究では、毎年冷水病の発生が認められている河川をモデル水系として、令和3年度は、同水系を管理している漁業組合や水産試験場との共同研究により、4~10月にかけて遡上アユ、放流アユ、おとりアユ、およびアユ以外の魚種を経時的に得た。そして、これら採捕魚体から冷水病原因細菌(以後Fp)の分離培養を行い、主にアユ釣り解禁後(6月以降)に河川で冷水病を発症したアユ(以後病魚)から分離されたFpと遺伝子型やゲノム核酸を比較することで、河川のアユに大量死をもたらす冷水病原因細菌の由来特定を目指した。なお、河川で採捕したアユは、従来の形態学的特徴による識別法に加え、安定同位体比を指標とすることで、遡上、放流、およびおとりアユの識別を行った。なお、FpはPCR陽性であった魚体から分離培養できない事例が多くみられるが、これはFpが生きているが培養できない(viable but non-culturable:VBNC)状態にあるケースであると推測される。よって本研究では、上記調査研究と平行して、従来のFp分離用培地より高い培養効率を有する新規培養培地を開発し、それをアユやその他魚種からの細菌分離に利用することで、上記結果の精度向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル水系を対象に冷水病の発生調査ならびに原因細菌Fpの分離培養を行った結果、令和3年度は例年と比較して、アユにおける冷水病を発症率が低かった。加えて、冷水病発症時期である6月に、アユで感染報告の無い Chryseobacterium 属細菌(Chryseobacterium sp.)に起因するものと推定される細菌感染症が発生し、結果として、FpとChryseobacterium sp.が混合感染している魚体も多くみられた。このような魚体は、寒天培地上でChryseobacterium sp.のコロニーがFpコロニーをマスクしてしまい、病魚からのFpの分離培養が困難となり、予定していた菌株数を得ることができなかった。なお、発症率が低かったため、予定していた安定同位体を指標とした河川アユの識別は予定していた魚体数より減らし、令和4年度に実施することとした。また、より高い効率でFpを分離するため、Fpの増殖性や代謝を亢進させるFpの新規分離培地の開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
モデル水系では、令和3年度は冷水病を発症したアユが少なく、加えてChryseobacterium sp.に起因する細菌感染症が発生し、予定していたFp数を得ることができなかった。そこで令和4年度は、発症率が低かった場合でも、本申請研究で予定していたFp株数を得ることができるよう、6月以降は毎週サンプリングを行うなど、令和3年度と比較して河川で採捕するアユの魚体数を1.5~2倍に増やす。なお、上記解析に用いたアユは、その由来を特定するため、形態解析に加えて安定同位体を指標とした識別を行う必要があるが、令和3年度は解析数を減らし、予算的に対応可能な状況にしてあり、解析魚体数を増加させることによる問題はない。また令和4年度は、令和3年度から開発を進めているFpの新規分離培地の一部を上記調査に使用予定であり、効率的な分離培養を進めることで、解析に使用するFp株数を確保したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度はモデル水系において、例年に比べ、アユにおける冷水病の発症率が低く、加えて他の細菌感染症が発生し、予定していた数のFp株やFp発症アユを得ることができなかった。そこで令和3年度は、安定同位体解析によるアユの由来解析を予定より1/4に減らし、その分、令和4年度の解析を1.5~2倍に増やすため、使用額の変更を行った。
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