研究課題/領域番号 |
21K05732
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
谷口 亮人 近畿大学, 農学部, 講師 (10548837)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 養殖漁場 / 有機物 / ブロモデオキシウリジン / 細菌鍵種 |
研究実績の概要 |
養殖漁場の水質浄化は細菌が担っている。細菌が駆動する物質循環が乱れると水質が悪化するが、その鍵を握る細菌種は未だ分かっていない。本研究では、養殖漁場における有機物の分解・利用に直接寄与している細菌種を特定することを目的としている。令和3年度は、既得試料と新規採取試料の処理を実施するとともに、養殖漁場の特徴的な有機物である養殖魚の餌料に応答して増殖してくる細菌を分離培養し、細菌種を特定した。使用した餌料は、現場養殖漁場で使用されているドライペレット(DP)とモイストペレット(MP)で、細菌が直接利用できる有機物は溶存画分であるため、溶存画分のみを抽出した。養殖漁場の海水および非養殖漁場の海水を採取し、それぞれに約3 mg/LとなるようにDPならびにMP有機物を添加したマイクロコスム実験を実施した。培養3日後および培養8日後にサブサンプリングし用いた培地は、海洋細菌分離汎用培地1/2 ZoBell培地ならびにDPあるいはMP有機物を1/2 ZoBell培地と同じような有機物量となるように添加したDPあるいはMP寒天培地である。寒天培地に塗抹して2週間以降に単離を行い、最終的に91株を得て、グリセロールストックした。あわせて、これら分離株のうち57株のITS領域と16S rRNA遺伝子領域の塩基配列を読んだ。特定できた細菌種のなかに、Proteobacteria門Alphaproteobacteria綱Rhodobacterales目やBacteroidetes門Flavobacteriia綱Flavobacterialesに近縁な分離株が複数いた。これらの細菌群は、研究代表者の先行研究において沿岸域で活発に増殖して物質循環を司っている細菌鍵種であることが示唆されている。今後、既得データと照合することで、これら細菌群の本養殖漁場における季節的な動態を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、一部コロナの影響で試料を採取と、シークエンサーの故障により、予定していた細菌群集構造の解析ができなかった。一方で、養殖漁場で実際に使用している餌料を用いたマイクロコスム実験を実施することができ、当初予定していたよりも多い分離株を分析に供することができた。すべての細菌株を分析することはできなかったが、細菌鍵種候補株を特定することができたことは今後の研究の進展にとって大きい成果といえる。以上のことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では、シークエンサーの故障により分析できなかった試料について分析を実施する。さらに、細菌鍵種候補株が出現している季節に集中したさらなる解析(16Sアンプリコン解析や機能解析)も実施する予定である。また、令和3年度には実施できなかった植物プランクトンを有機物源とするマイクロコスム実験を実施し、増殖してくる細菌分離株を得ることで、養殖漁場における細菌鍵種の特定にさらにつなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた細菌群集構造解析が、シークエンサーの故障により実施できなかったために次年度使用額が生じた。令和4年度は当初予定していた分析に加えて、シークエンサーの修繕が終わり次第に、細菌群集構造解析に取り掛かる。
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