研究課題
琵琶湖において養殖されていたニジマスに新しい微胞子虫症が発生し、患部の超薄切片の電子顕微鏡観察および分子系統解析の結果より、Kabatana takedaiに近縁の新種の微胞子虫であることが判明した。しかし、本種は琵琶湖産スジエビの投与により感染し、スジエビ体内にはInodosporus属と思われる微胞子虫が検出された。InodosporusとKabatanaの原記載は、前者の方が古いことから、Inodosporus属に優先権があるため、Inodosporus fujiokaiという新種名を命名した。また、肉眼的に白濁した琵琶湖産スジエビからI. fujiokai胞子を採集し、魚類に経口投与する感染実験を標準化した。その結果、ニジマスとビワマスいずれにも感染することが示され、投与20日後には体側筋と心臓にシストが形成され、同時に酸欠症状を伴う死亡もみられた。病理組織学的観察結果から、心臓のシスト形成が心筋炎を引き起こし、心臓機能の低下から酸欠に陥り死亡することが推測された。また、本病の特徴的症状と思われた皮下の赤斑は必ずしも発生しないことも分かった。さらに別の感染実験において、I. fujiokaiがマス類(イワナ、アマゴ、ビワマス、ニジマス)に感染したが、死亡率は各魚種でそれぞれ100%, 93%, 86%および80%、シスト検出率は50%~80%と差がみられた。一方、ホンモロコでは死亡率とシスト検出率はいずれも6%と低かったが、遺伝子検出率は41%と低くはなかった。ただし、アユでは死亡率、シスト検出率、遺伝子検出率はいずれも0%であった。
2: おおむね順調に進展している
病原体の系統学的位置が確定し、死因と想定される病理学的所見も推測できたが、魚種間の病理反応の違いについては特定できなかった。
琵琶湖内での本来の宿主(おそらくコイ科魚類)を明らかにし、感受性の高い魚種とそうでない魚種との違いを定量的および定性的に解明する。
すべて 2023
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Parasitology
巻: 150 ページ: 1-14
10.1017/S003118202200141X