研究課題/領域番号 |
21K05733
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
横山 博 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (70261956)
|
研究分担者 |
柳田 哲矢 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40431837)
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 准教授 (70565936)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 微胞子虫 / マス類 / 琵琶湖 / 生活環 / 病害性 / リアルタイムPCR |
研究実績の概要 |
琵琶湖産ニジマスの体側筋から新種記載された微胞子虫Inodosporus fujiokaiの感染について、宿主別の感受性の違いについて調べた。感染源としては、琵琶湖で捕獲されたスジエビの筋肉を甲殻から分離して懸濁液状にした後、魚へ投与する感染実験を実施した。その結果、本虫はビワマスやアマゴにも感染しただけでなく、酸欠症状を伴う死亡もみられ、心臓のシスト形成が心筋炎を引き起こし、心機能の低下によって酸欠から死に至ることが示唆された。また、本虫はサケマス類だけでなく、ウグイやマゴイなどのコイ科魚やブラックバスなどサンフィッシュ科にも感染することがわかったが、寄生強度(シスト数)はサケマス類ほどは高くなかった。 さらに、本虫の感染を定量的に評価するため、I. fujiokaiに特異的なリアルタイムPCR (qPCR)法を開発した。その結果、本qPCR法は1×10^3から^8遺伝子コピーの範囲で高い定量性を示した。スジエビ由来のI. fujiokai胞子懸濁液を用いてアマゴに浸漬感染後、経時的に体内臓器中のI. fujiokai遺伝子量を調査した結果、血液では感染1日目の遺伝子量が最も高く(10^3レベル)、速やかに血球内または血液中に移行すると考えられた。心臓や体側筋における遺伝子量は2日目以降顕著に増加したが、いずれも一時的に減少し、宿主免疫による一次的な増殖抑制が示唆された。感染後14日目に体側筋でシストが顕在化するとともに遺伝子量が10^5付近に達した。 以上の研究成果より、新種の微胞子虫I. fujiokaiは琵琶湖産のサケマス類だけでなく、コイ科魚など様々な魚種に感染し、様々な病態を呈することが明らかになったが、その病理学的メカニズムは不明のまま残された。今後、qPCR法などの技術を駆使して、本来の宿主および宿主間の感受性の違いを解明することが期待される。
|