シオダマリミジンコを代理宿主としてブリ筋肉線虫Philometroides seriolaeのふ化幼生をブリへの感染期の3期幼生に発達させる実験系を確立した。この系を使って、3期幼生を持ったミジンコを無感染ブリに投与した結果、11か月後に体側筋より成虫を得た。これにより海産魚寄生のフィロメトラ科線虫のふ化幼生から成虫までを実験的に初めて完結させた。得られた成虫の子宮内の胚の発育状態から、本虫の生活環完結には1年以上を要すると推定された。また、ブリの鰾内から成熟雌虫を見出した。体側筋以外の部位から本虫が初めて回収されたが、鰾寄生が迷入なのか、体側筋に移行する過程なのか、特定できなかった。従来、本線虫のふ化幼生は1期とされてきたが、多くの個体ですでに脱皮殻をもっていたことから、2期と判断するのが妥当と考えられた。ミジンコ内では20℃でも25℃でも12日後には3期幼生が出現し始め、28日後にはすべて3期幼生に変態した。また、未記載であった雄成虫を自然感染ブリから得て記載した。 マダイ生殖腺線虫Philometra madaiのふ化幼生はミジンコへの寄生率は低く、代理宿主として不適であった。一方、天然カサゴの生殖腺線虫Philometra sebastisciと鰓蓋寄生のClavinema sp.ではミジンコにおける寄生率はそれぞれ 48 %~100 %、42 %~79%と高く、ブリ筋肉線虫以外の線虫類にも代理宿主が適用できることが確認された。P. sebastisciに感染させたミジンコをカサゴ人工種苗に投与し、腹腔内から幼虫7個体を回収した。うち2個体は未報告の雄虫であった。高成長系統マダイ親魚におけるマダイ生殖腺線虫の寄生を14か月にわたり調査した結果、雌雄親魚の生殖腺には周年を通して高率に虫体の死骸がみられた一方、生存虫体はマダイ産卵期のみに出現した。
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