研究課題/領域番号 |
21K05739
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
田和 篤史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (80781864)
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研究分担者 |
田中 庸介 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(清水), グループ長 (70454626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マグロ族魚類 / 稚魚期 / 炭素窒素安定同位体比 / 食性転換 / 魚食への切り替わりのタイミング / 初期生残プロセス |
研究実績の概要 |
一般的に魚類仔稚魚は成長の良い個体が選択的に生き残る事例が多い.また飼育実験では動物プランクトン食から魚食への食性の変化が高成長を促すことが知られている.したがって魚食への切り替わりのタイミングとその後の成長は,自然界においても仔魚期以降のマグロ族魚類の初期生残や加入量を決定する要因になっていると考えられる.近年食物網解析に利用される炭素窒素の安定同位体比は,同位体効果により食物網の低次から高次栄養段階に従って,その値が高くなる.そのため,体を構成する栄養源の構成要素が変化すれば,捕食者自体の同位体比も高くなるため,その変化を検出することができる.本研究はマグロ族仔稚魚について安定同位体比分析を駆使して,成長に伴った食物源を調査し“いつ,どこで,どのように”食性が切り替わるかを解明することを目的とする. 2022年度は主に南西諸島フィールドにおいてマグロ族仔稚魚とその他仔稚魚のサンプル収集と,炭素窒素安定同位体分析を実施した.結果として,カツオ,キハダ,クロマグロ,マルソウダ,ヒラソウダ,スマの仔稚魚のサンプルを採集することができた.これらマグロ族仔稚魚の餌生物候補として,同所的に採集されたその他の仔稚魚も採集し,形態形質によって可能な限り同定後,不明種をDNAバーコーディングによって種同定した.採集されたマグロ族とその他仔稚魚については,形態計測と炭素窒素安定同位体比分析を実施した.これまでの安定同位体比の解析の結果では,カツオは,クロマグロやキハダに比べて,発育段階の早い段階で同位体比が上昇する傾向にあり,魚食への転換も早い時期に進んでいることが示唆された.得られたマグロ族魚類については,耳石サンプルも取得し,現在各種の成長履歴の解析に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、南西諸島フィールドでマグロ族仔稚魚及び餌となるその他仔稚魚のサンプルの採集とその安定同位体比分析を実施した.一方,調査船の故障により,予定していた時期に常磐沖フィールドでの調査が全くできなかったため,今年度想定していたサンプルが得られなかった.また安定同位体分析についても,コロナ禍によるガス供給の制限により分析数が減少した. 一つの調査フィールドでサンプルの収集が全くできなかったことと,安定同位体比の分析数の減少から,今年度の進捗状況はやや遅延していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
調査船の修理は完了し,予定通り調査が可能となったため,今年度は昨年度得られなかった常磐沖フィールドにおけるサンプル採集を行う予定である.また,現在取り組んでいる耳石の輪紋解析から,各種の成長履歴を明らかにし,それらの成長履歴と安定同位体比の結果を組み合わせて,いつ,どこで,どのように食性が切り替わるか,そして成長との関係を明らかにしていく予定である. それらに加えて,これらまでの同位体分析の予備的な解析から,マグロ族魚類の食性が切り替わる時期(体サイズ)が,これまでの調査方法では最も採集することが難しい体サイズであることが明らかになってきた.そのため,次の調査では,新たな調査手法(採集ネット)も取り入れる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
清水庁舎から横浜庁舎に異動になったため,横浜庁舎での分析に関わる旅費等が必要なくなったこと,また今年度は学会参加ができなかったことなどの理由で,経費を繰り越した。次年度は,成果を取りまとめた国内学会及び論文発表時の英文校閲費,またDNA分析と同位体分析のための消耗品類に使用する.
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