研究実績の概要 |
2023年度は南西諸島及び常磐沖フィールド(以下南西海域,常磐海域)の2つの海域においてマグロ族仔稚魚のサンプルを収集し,炭素窒素安定同位体分析, 胃内容物の顕微鏡観察とメタバーコーディング解析をそれぞれ実施した. これまでの安定同位体比分析の結果を踏まえ,キハダとクロマグロにおいて,安定同位体比の区分回帰分析を行ったところ,両種において体長6-8mmの範囲に変曲点が認められ,食性の変化が示唆された.顕微鏡観察では,2つの海域でそれぞれ採集されたキハダ(3.4-50.1mm)とクロマグロ(3.1-111.5mm)の仔稚魚について胃内容物を直接観察した.その結果,魚食が確認された最小サイズは,南西海域のキハダで6-7mm, クロマグロで7-8mm, 常磐海域のキハダで7-8mm, クロマグロで8-9mmだった.15-20mm以上の稚魚期以降は,ほぼすべての個体で魚食の痕跡が確認された.顕微鏡観察と安定同位体比の結果はよく一致しており,キハダとクロマグロが,稚魚期になる前の段階ですでに魚食に転換していることを示唆している. マグロ族稚魚期の胃内容物直接観察では,稚魚が日没後に採集されたものであるため,消化が進んでおり,正確に同定できる胃内容物は得られなかったため,胃内容物のメタバーコーディング解析を実施した.南西海域のキハダとクロマグロの稚魚期(21.4-30.1mm)について分析した結果,16科28種の魚類のDNA型が確認された.胃内容物で出現頻度の高い魚種は,キハダとクロマグロの両種で類似しており,夏季南西海域の表層域で出現頻度の高い仔稚魚と一致しており,キハダとクロマグロ稚魚が日和見的な捕食をしていることを示唆している.
|