研究課題/領域番号 |
21K05745
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
阿部 信一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (40371869)
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研究分担者 |
棗田 孝晴 茨城大学, 教育学部, 教授 (00468993)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 付着藻類 / 淡水魚類 / 河川生態系 / 排泄 / 移動・分散 / 河川横断工作物 / 珪藻 / リュウキュウアユ |
研究実績の概要 |
本研究では,標識放流等により淡水魚類の河川内移動を把握すると共に,魚類の糞中に含まれる増殖能力を持った底生藻類の有無を確認することを通して,魚類を介した底生藻類の河川内分散の可能性を検証する。2022年度は,奄美大島を流れる役勝川に生息する絶滅危惧種リュウキュウアユを調査する機会を得て,河川上中流域で採捕した本種20個体の糞を観察した。その結果,糞中にラン藻類,珪藻類,鞭毛藻類および緑藻類の生細胞を確認した。特に,珪藻類および緑藻類の生細胞数が多く含まれ,それぞれ1万~24.5万細胞および0~2万細胞の範囲で変動した。なお,アユを用いた実験から,有機物量に換算して,採食した底生藻類の24 %~69 %が糞として排泄されることが分かっている。滅菌河川水を用いて糞を粗培養した結果,Cosmarium属の接合藻類およびMelosira varians等の珪藻類の増殖を確認した。それら藻類種の生存は、雑食性魚類シマヨシノボリの糞中でも確認されている。リュウキュウアユは河口から10 km以上離れた上流域まで遡上する。本種の遡上に伴い,ある種の底生藻類は川を遡って広い範囲に分散され得ると考えられる。その他,茨城県を流れる那珂川支流桂川で2021年12月から2022年12月まで標識個体の移動を追跡調査した。その結果,底生魚類の1種カジカ大卵型は,取水堰の瀬木板が取り除かれた際に,落差5cm程度であれば堰を超えて移動することが観察された。しかし,落差130 cmの堰では,堰を超えて移動した個体は観察されなかった。取水堰の開放による底生魚類の堰上流部への移動の成否は,堰の落差の影響を強く受けることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、数種の淡水魚類について、藻類の生細胞が排泄されていることを確認した。また、河川に標識放流した個体の追跡調査も進んでいる。調査は,当初計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,食性の異なる様々な魚類が排泄した糞を観察する。また,桂川での標識放流調査を継続して行う。それらの調査を通して,魚類を介した底生藻類の河川内分散を検証すためのデータを蓄積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品調達において計画予算と購入金額に若干の差額が生じた。残額は次年度の野外調査で使用する消耗品等で使用する予定である。
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