研究実績の概要 |
最終年度にあたる今年度においては,波浪の振幅や周期,また延縄漁具の短縮率が釣針部の振動に与える影響について明らかにした。東京海洋大学練習船「神鷹丸」(986t)とまぐろ延縄漁船 (167t)の操業結果を用いた解析対象とした。神鷹丸では枝縄数13本付けの通常鉢と,7番枝縄の代わりに中立ブイを取り付けた中立ブイ鉢で構成し,まぐろ延縄漁船は全て枝縄数4本付けの鉢で構成した。漁具の各部に深度計,加速度計を取り付けて漁具の振幅と振動周期を求めた。また,神鷹丸の操業では波高計およびGPSロガーブイにより波浪の周期と波高,漁具の短縮率を得てそれらの関係について分析した。その結果,釣針部の振幅はいずれの船舶の操業試験においても浮子に近い枝縄ほど有意に大きかったが,神鷹丸の通常鉢における12番釣針部の振幅は0.2~0.5m程度が多かったのに対して,まぐろ延縄漁船の1番釣針部の振幅は0.2m程度のものが多く,漁具の仕立てによっても振幅は異なると考えられた。また,海洋環境情報を得た神鷹丸の操業結果から,釣針部の振動周期は波の周期と概ね一致し,また有義波高が大きいほど釣針部の振幅が大きく,両者には有意な相関が見られた。中立ブイ鉢でも1, 3番釣針部の振幅は有義波高に対して有意な相関が見られたが,中立ブイに近い5番枝縄の釣針部では有意な相関が見られなかった。一方,短縮率と釣針部の振幅間にはいずれの鉢においても有意な相関が見られた。以上の結果から,仮設通りに,波高が大きくなるほど釣針部の振動は大きくなるが, 中立ブイ付近の釣針部は振動が抑えられるためにその傾向が見られないこと,また短縮率の変化は幹縄にかかる張力の違いとなり,釣針部の振動に影響を与えることが分かった。
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