研究課題/領域番号 |
21K05756
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永田 恵里奈 近畿大学, 農学部, 講師 (20399116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 冷水病 / 宿主特異性 / アユ / サケ科魚類 / ニジマス / 血清型 / O抗原 / 病原性 |
研究実績の概要 |
冷水病菌はさまざまな方法で宿主魚種と対応させて分類することができる。先行研究において,アユから分離された冷水病菌は大きく分けて2系統(CC-ST52とCC-ST48-56)に分かれること,CC-ST48-56系統の冷水病菌はコイ科魚類由来の冷水病菌と同じグループを形成していることがわかった。また,O抗原関連遺伝子(wzy遺伝子)を標的としたmultiplex PCR-based serotyping法により,アユの冷水病菌はType3であり,ニジマス等由来株の一部と同じ血清型であることが明らかになった。本研究では,2022年に滋賀県で分離されたホンモロコ,ギンブナそしてニホンウナギ由来の冷水病菌株について,上記の手法を用いて遺伝系統と血清型を調べた。ホンモロコ由来とギンブナ由来の冷水病菌株の一部はCC-ST48-56系統に所属しており,血清型も同じType0であったことから,同じ起源の冷水病菌が両魚種に感染していたと考えられた。アユ由来株はどちらもCC-ST52系統であり,同じ養殖場で同じ時期に冷水病が発生していたが,ギンブナやホンモロコに感染していた冷水病菌はアユの冷水病菌とは異なっていた。アユの冷水病菌の血清型を調べたところ,先行研究で明らかになっていたType3に加えて,新しいType 1の遺伝子をもつ冷水病菌であることがわかった。Type1は海外でニジマスから多く分離されている。今後,この新しいType 1の遺伝子をもつ冷水病菌の病原性を確認する必要がある。ニホンウナギ由来株は,CC-ST48-56系統やCC-ST52系統ではなく,海外でヨーロッパウナギから分離された冷水病菌株(1989年ドイツ,1998年フランス)と同じST15系統に所属することがわかった。また血清型はType1であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19により共同研究先のフランスへの渡航ができず,当初計画していた実験の一部(遺伝子欠損株の作出)が実施困難になった。そのため,実施計画の順番を入れ替え,これまでに取得した冷水病菌のゲノム解読ならびに菌株間の比較ゲノム解析を実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム比較のための最新の冷水病菌株が収集できたので,次年度にゲノム解析と菌株間の比較を行なって,病原性ならびに宿主特異性に関与すると考えられる候補遺伝子を探す。また,新しく分離した冷水病菌の病原性を確認するため,攻撃試験を行う。遺伝子欠損変異株の作出ができない場合に備えて,遺伝子発現解析の実施を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加期間の短縮等により次年度使用額が発生した。次年度の国内旅費に使用する。
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