研究課題/領域番号 |
21K05757
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研究機関 | 福島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柴田 公彦 福島工業高等専門学校, 化学・バイオ工学科, 准教授 (10369928)
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研究分担者 |
阿部 勝正 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 准教授 (40509551)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アスパラギン酸ラセマーゼ / D-アミノ酸 / D-アスパラギン酸 |
研究実績の概要 |
ナマコやウニは水産上、重要な生物種であるが、天然資源は急激な減少傾向にある。ナマコやウニの資源量の回復と安定した生産を実現するためには、効率的かつ計画的に種苗を供給することが不可欠である。そのため、親個体の性成熟を人為的に誘起する技術の確立が課題となっている。申請者らは,棘皮動物であるイトマキヒトデ組織に存在するD-アスパラギン酸やその合成酵素であるアスパラギン酸ラセマーゼが性成熟に関与している可能性を見出し、さらにD-アスパラギン酸投与が生殖腺指数の上昇を誘起することを発見した。そこで本研究では、D-アスパラギン酸によるイトマキヒトデの性成熟メカニズムを明らかにするとともに,それを同じ棘皮動物であるナマコやウニに応用展開することで新しい人工催熟法を確立することを目的とした。 本年度は、まず未成熟ナマコへのD-Asp投与の効果を確認したが、現時点で生殖腺指数が変化するような投与条件は見出せていない。そのため、D-アスパラギン酸投与の効果が確認できない場合の研究実施計画に従い、イトマキヒトデとナマコのD-アスパラギン酸含有量、全アスパラギン酸に占めるD型の割合、アスパラギン酸ラセマーゼ活性およびそれらの季節変化の比較をおこなった。その結果、イトマキヒトデとナマコには多くの類似点が認められた。また、今後詳細な検討を行うために必要となるイトマキヒトデとナマコのアスパラギン酸ラセマーゼ遺伝子の配列解析を行い、現在までにイトマキヒトデにおいては約80%の解読に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず未成熟ナマコへのD-アスパラギン酸投与の効果を確認したが、現時点で生殖腺指数が上昇するような投与条件は見出せなかった。しかしこのことは想定内であり、このような場合の研究実施計画に従い、イトマキヒトデとナマコのD-アスパラギン酸含有量、全アスパラギン酸に占めるD型の割合、アスパラギン酸ラセマーゼ活性およびそれらの季節変化の比較をおこなった。その結果、イトマキヒトデとナマコの多くの類似点を確認することでき、さらにはアスパラギン酸ラセマーゼ遺伝子の配列情報も取得することもできたことから、現時点でおおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度見出せなかった性成熟を誘起させるD-アスパラギン酸投与条件は、今後も継続して検討実施する。さらにD-アスパラギン酸によるイトマキヒトデの性成熟メカニズムを明らかにするために、以下の項目について検討する予定である。 (1)イトマキヒトデやナマコから取得したアスパラギン酸ラセマーゼ遺伝子をpETベクターに組み込み,大腸菌を用いて発現、精製し、酵素化学的性質の解析を行い、比較検討する。 (2)アスパラギン酸ラセマーゼの性成熟との関連を明確にするために、イトマキヒトデやナマコのアスパラギン酸ラセマーゼ遺伝子の転写レベルを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
未成熟ナマコへのD-アスパラギン酸投与の実験結果をふまえ、今年度はアスパラギン酸ラセマーゼ遺伝子解析を中心に研究を進めることになったため、初年度に設備備品として購入予定であったクロマトデータ処理装置の購入を控えたため差額が生じた。またコロナ禍で学会大会への参加を一部控えたことも理由の1つである。 しかし研究は予定通り進展しており、本年度取得できた遺伝子情報をもとに次年度は「アスパラギン酸ラセマーゼの機能解析および発現解析」を進める予定であり,主にDNA組換え実験及び酵素の精製や特性解析に必要とされる試薬や器具などの消耗品を購入する計画である。また、本研究で得られた研究成果を積極的に発表するための論文投稿に関わる費用や旅費にも支出する計画である。
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