研究課題/領域番号 |
21K05760
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
長谷川 功 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(札幌), 主任研究員 (00603325)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ボトムアップ効果 / 食うー食われるの関係 / 種間競争 / ギルド内捕食 / イワナ / サクラマス |
研究実績の概要 |
サクラマスの放流種苗が生態系に与える影響の中でも、特にボトムアップ効果に着目した研究成果を公表することができた(Hasegawa & Fukui 2022 Royal Society Open Science)。本成果は、当該研究課題の主要成果の一つであると考えている。 サクラマス放流種苗の上位捕食者(イワナ)の食性は、放流直後は放流種苗に極端に偏った。ただし、種苗に対する捕食はこの短期間のみに限られ、放流後3週間程度経過すると、イワナの食性は放流種苗と同様、水生・陸生の無脊椎動物となった。 イワナの成長を放流種苗がいる河川といない河川で比較したところ、統計学的には有意では無いものの放流種苗がいる河川の方が成長がよかった。すなわち、種苗に対する捕食はごく短期的ではあったが、種苗放流はイワナの成長を高める効果があると考えられた。一方で、成長や捕食量への影響は検出できなかったが、イワナと放流種苗の食性が重複する期間は、両者は餌資源を巡る競争関係にあると推察された。 ちなみに、自身の別論文では、サケの放流種苗によるトップダウン効果(水生昆虫や藻類への影響)を検出したが(Hasegawa et al. 2018 Hydrobiologia)、本研究では確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サクラマスの放流種苗が生態系に与える影響のうち、トップダウン効果については検出出来なかったが、ボトムアップ効果の検出には成功し、それを論文として発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
サクラマス放流種苗の捕食がイワナの成長にどの程度寄与したかは不明瞭であったが、栄養状態や脂肪酸組成など、生理学的な面では影響があったことも考えられる。そこで、放流河川と非放流河川でイワナサンプルを収集し、これらの点について分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大以降、出張を必要最低限に控えたこと、あるいは学会開催がオンラインでも参加できる形式となったため、特に旅費の支出が予定よりも少なくなっている。当該研究課題の実施期間も後半に入り、これからは得られたデータの論文化を積極的に進めていくが、助成金未使用分はオープンアクセスのための費用に充てる。
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