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2023 年度 実施状況報告書

サクラマスの放流種苗が河川生態系へ与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K05760
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

長谷川 功  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(札幌), 主任研究員 (00603325)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード脂肪酸 / 食うー食われるの関係 / さけます / 放流種苗
研究実績の概要

栄養段階下位の生物の個体数増加が、食う-食われるの関係を通じてその捕食者に影響することをボトムアップ効果という。ボトムアップ効果について、これまでの研究事例では、捕食者の個体群動態や個体レベルの成長が扱われることが多かったが、栄養状態など捕食者の生理学的側面については注目されてこなかった。そこで、本研究では河川に放流されたサケ科魚類サクラマスの稚魚を捕食するサケ科魚類イワナを対象として、筋肉中に含まれるオメガ3脂肪酸(特にDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸))の変化を調べた。供試個体は、2021年に北海道尻別川水系の支流6箇所で採集した。6箇所のうち、3箇所は放流されたサクラマスが分布し(放流河川)、残る3箇所には分布しない(非放流河川)。放流直後にはイワナはサクラマスを大量に捕食することが本研究課題内で実施した先行研究で分かっている。放流河川では、放流前(5月20日)と比べて放流後(6月23日)にイワナのDHAとEPAまた総脂肪酸含量が増加したのに対し、非放流河川で採集したイワナでは同期間で変化はみられなかった。また、DHA含量はイワナの体サイズが大きくなるにつれて多くなり、逆にEPA含量は少なくなった。これらのことを示すデータを精査、統計解析し、論文を取りまとめ、Scientific Reports誌に発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題で当初検出を目論んだ「放流種苗捕食による捕食者の成長向上」は失敗に終わったが、それに替わって生理学的側面から放流種苗の捕食者への影響を検出することに成功したため。

今後の研究の推進方策

これまでイワナをサクラマス放流種苗の捕食者として研究を進めてきたが、サクラマスと同所的に棲む他の肉食性魚類については調べていない。今後は、それらの放流種苗捕食の実態について検討する。また、サクラマスと同じサケ科であるサケの放流種苗の影響についても、同様のことを調べる。

次年度使用額が生じた理由

脂肪酸分析用の試薬に在庫があり、購入しなかったこと、生態学会参加をオンラインとしたために旅費がかからなかったことが使用額が少なかった要因である。翌年度は、本研究課題に関連した論文を投稿予定であり、その掲載料が高額(約50万円)になる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] DHA and EPA levels in a piscivorous fish changed by preying upon stocked salmon fry2023

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa K, Yano Y, Honda K & Ogura Y
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 15278

    • DOI

      10.1038/s41598-023-42530-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ボトムアップ効果の生理学:種苗放流後に観察された魚食性魚類のDHA・EPA含量の変化2024

    • 著者名/発表者名
      長谷川功、矢野豊、本多健太郎、小倉裕平
    • 学会等名
      日本生態学会
  • [学会発表] Sustaining a native white-spotted charr population through removal of nonnative brown trout2023

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa K
    • 学会等名
      10th International Charr Symposium
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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