研究課題/領域番号 |
21K05764
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東藤 孝 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (60303111)
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研究分担者 |
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10443920)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 卵黄形成 / 油球 / 卵黄球 / 中性脂質 / 卵黄タンパク質 / リポタンパク質 / メダカ / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究は、魚類の卵母細胞における広義の卵黄物質、すなわち中性脂質(油球)と卵黄タンパク質(卵黄球)の蓄積機構について、それらに関わる重要な分子群の機能を最先端のゲノム編集技術を用いることにより解析し、明らかにすることを目的としている。メダカを研究モデルとし、「課題1:油球形成機構の解析」と「課題2:卵黄球形成機構の解析」の2課題を設定して研究を進めている。 課題1:油球形成に重要な役割を担っていることが予想される酵素(リポタンパクリパーゼ:Lpl)について、メダカ卵濾胞組織における2種lpl mRNA(lpl1およびlpl2)の卵母細胞の発達段階に伴う発現変化を定量的PCR法により解析した。その結果、2種lpl mRNA発現量はともに卵黄形成の進行に伴い増加し、卵黄形成後期にピークを示した後、卵成熟期において有意に減少した。CRISPR/Cas9システムを用い、lpl1への変異導入を施したメダカ(F0)を作出した。さらにF0と野生型メダカとの交配により得られたF1において、フレームシフトを伴う変異を持つヘテロlpl1-KOメダカの作出が確認できた。 課題2:卵黄タンパク前駆物質(ビテロジェニン:Vtg)の卵内への取り込みに必要な3種のリポタンパク質受容体(Lr7、Lr8、Lrp13)のそれぞれについて、メダカ卵濾胞での発現解析ならびに、KO魚の作出とそれらの表現型解析を進めている。3種受容体のうち、Lr7およびLr8について、定量的PCR法により、卵巣を含む各体組織における遺伝子発現分布を調べた。その結果、lr7は腸で有意に高い発現が見られたが、卵巣での高発現は認められなかった。一方、lr8は卵巣に特異的な高発現が観察された。CRISPR/Cas9システムを用い、lrp13-KOメダカの作出を試みた。その結果、lrp13への変異導入に成功したと考えられるF0個体が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題2でのゲノム編集に用いるガイドRNAの選定において、予想以上に時間を要したため、ノックアウト魚の作出がF0世代までに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
課題毎の方策を以下に記載する。 課題1:作出したlpl1-KOメダカF1世代の雌雄を交配することでF2世代を得る。その表現型解析(卵母細胞内の油球観察、中性脂質の量的・質的解析、卵の受精率や孵化率の変化など)により、卵内での油球形成に及ぼすlpl1-KOの影響を明らかにする。また、Lpl以外の油球形成関連因子として、遊離脂肪酸の卵内への取り込みに関与する脂肪酸トランスポーター(Fatp)や脂肪酸輸送タンパク(Fabp)、について、メダカ卵濾胞における遺伝子発現パターンを解析し、その結果、油球形成への関与が強く示唆されたものについて順次KO魚の作出・表現型解析を進める。 課題2:作出したlrp13変異導入メダカF0世代を解析し、lrp13の変異導入によりlrp13-KOが可能な個体を選抜して、F1〜F2世代の作出を進める。また、lr7-KOメダカも作出し、それらの表現型解析(各種卵黄タンパク質の量的・質的解析、卵の受精率や孵化率の変化など)により、Lr7とLrp13の卵黄形成(卵へのVtgの取り込み)における役割を明らかにする。また同時に、メダカ卵濾胞組織における3種リポタンパク質受容体(Lr7、Lr8、Lrp13)の卵形成過程に伴う時間・空間的発現変化を遺伝子・タンパク質の双方のレベルで解析する。さらに、Vtgの卵への取り込みに関与すると考えられる新規タンパク質(Y-box binding protein 2a-like)について、メダカ卵濾胞における遺伝子発現パターンを解析する。
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