スケトウダラ水溶性タンパク質(WSP)が非感染性疾患に対応する食品素材となる可能性を,原料特性と機能解析の両面から検討し,次の知見を得た。(1)原料管理に関わる重要な知見:WSPの主要4成分を同定するとともに,WSPの抗炎症機能が魚肉の原料鮮度に関わらず,また実際の工場ライン廃液でも保持されていることを明らかにした。さらに,主要4成分のうちで魚肉の主要アレルゲンであるパルブアルブミンはESPの抗炎症機能を担う主要成分ではないと判断した。パルブアルブミンは他成分と分画が容易であることから,WSPの低アレルゲン化が可能と判断した。 (2)非感染症疾患の予防効果:ラットまたはマウスを高脂肪高ショ糖食(HFHS)で2ヶ月以上飼育し,食事誘導性肥満を惹起させた。その際,全タンパク質の1/2をWSPに置換すると,食事誘導性肥満が抑制されることを確認した。このとき,肝臓TGと血中AST濃度の上昇が抑制され,肝臓におけるアディポネクチンとレプチンの分泌異常(脂肪組織における関連遺伝子の発現量に裏付けられている)も抑制傾向を示した。さらに,食事誘導性肥満を誘導したマウスに対してLPSとD-ガラクトサミンを投与して非アルコール性脂肪肝炎と類似の症状を惹起させたが,WSPによって肥満状態下でも抑制されていた血中AST濃度の上昇は,そのまま抑制状態を維持していた。以上の結果は,食事誘導性肥満の抑制と非アルコール性肝炎予防の可能性を示唆している。 (3)WSPへの糖鎖導入効果:タンパク質の抗炎症機能改変に実績のある糖鎖導入の試み:in vitro での改変作用は確認できたが,in vivo実験では,健康機能の増強は生じなかった。よってWSPの活用における糖鎖導入の必要性はないと判断した。 以上,本研究の当初目標はほぼ達成され,今後の研究に資する有益な学術情報を得ることができた。
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